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2014/05/03

『女のいない男たち』/村上春樹

4163900748 女のいない男たち
村上 春樹
文藝春秋  2014-04-18

by G-Tools

断トツに深い印象を残したのは『木野』。その都度その都度の出来事に対して本気の感情を出さない姿勢の顛末を描いていると思うけど、「しかし正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世界にはある」という一文をめいっぱい拡大解釈したくなる物語でした。黙って見過ごすことがより大きな罪であり災いを引き起こすのが現代社会だと思う。

タイトルどおり、女に「見捨てられる」男が主人公の短編集で、これまではそういった男が市民権を得ることはなかったと思う。むしろそれが特殊だから話になる、という扱いだったと思うけれど、本作はそれが普通のことになった、つまり女も男も捨てるものであり捨てられるものになったんだということを象徴しているよう。

目についたのが、「病気」といった言い回しが出てくること。もうどうしようもないことが世の中にはあって、それは「病気のようなもの」という片付け方を何度かしているように思う。それは突き詰め方が甘いというよりも、「なんでもかんでも原因分析してきりきりしていくばかりがいい結果にならない。病気だってあるんだ」という姿勢が現代は結構重要なんじゃないか、という視点を僕に改めてくれた。

『ドライブ・マイ・カー』

p29「週末にはマチネー」
『独立器官』
p131「世の中には礼儀正しい人間がいて、機転の利く人間がいる。もちろんどちらも良き資質だけど、多くの場合、礼儀正しさより機転の方が勝っている」
p139「私とはいったになにものなのだろうって」
p148「ずっと顔を見せていた人が、ある日からまったくやってこなくなる」
p163「死んだ誰かのことを長く記憶しているのは、人が思うほど容易いことではない」
『シェエラザード』
p204「これでもうあの家には空き巣に入らなくてもいいんだ」
『木野』
p220「同好の士というものをまわりに持たない」
p247「しかし正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世界にはある」
p254「そしてそこで木野がもっとも意外に思ったのは、あるいは驚いたのは、人々が時々とても楽しそうな表情を顔に浮かべることだった」

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