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2014/09/19

『「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ』平川克美

4903908534 「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ (シリーズ22世紀を生きる)
平川克美
ミシマ社 2014-06-20

by G-Tools

 本著で疑問を感じた点は2つに集約できます:

1) 自分たちが生きた、経済成長の時代を、どのような国家でも経済発展の中で辿るであろう「自然過程」としていながら、現在以降に本来なら辿るであろう過程を否定し、いわば「自然」ではなく、「意志」の力で「自然」に抗うことを強いている点。そういった「意志」の力で「自然」に抗わなければならないような状況を生んだ、かつての自分たちの営みはすべて「自然過程」で片づけて顧みもしない点。
2) p131”ヨーロッパや日本で起きたことが示すのは、文明がある程度のところまで進展すると、自由や独立を望む個人が増え、伝統的な家族形態が解体へと向かって社会が変質するということです。”と、ヨーロッパや日本というように普遍性があるような記述であるにも関わらず、p120”自分たちが伝統的にもっていた、いわざ「自然過程」を通じて培われてきた、封建的ではあるが贈与・互酬的な会社システムを、外からもち込んだ人工的なものでそっくり入れ換えようとしても、うまくいくわけがありません”と、日本独自の社会性が”「消費」をやめる”社会の成立要件であると記述している点。

 ある社会変遷が、その国独自の要件に依存しているのか、それとも国を問わず普遍的なものなのかは、混乱してはならない点だと思います。本著はあたかも「日本であれば消費社会を脱することができる」と主張しているように読めますが、消費社会を脱することの必要性や利点の主張はありますが、なぜ「日本だけが」消費社会を脱することができるのか、その根拠が十分に説明できているとは思えません。
 全体的には、お金に困り、医療費や年金と言った社会保障にも不安を抱く高齢者が、安心してこれからの老後を生き抜くために、なるべくお金のかからない世の中にしたい、それはすなわちいろんな人から「無償」で助けを得られる世の中にしたい、という願望と、p228「おカネは必要ですが、おカネを持っている人はどこからか見つけてくればいい。とくに期待したいのが団塊の世代」にあるように、どこかからスポンサー(パトロン)を見つけて、金持ちからお金を融通してもらえばいい、という処世術を綯交ぜにしたような内容だと思います。

 率直に言って読む必要はあまりないかと思います。団塊世代が何を考えているかを知るには好著で、ぱらぱらと斜め読みして2時間ほどで事足ります。

p3「日本全体の経済が停滞しているわけですから、自分の会社だけが右肩上がりに成長するというのは、よほど商品力があるか、運がいいか、あるいは一時的な現象かと考えるほうが自然」

p21「画面のなかで、アメリカの若者の欲望のありさまを見て、それをわたしたちも欲しいと思う。そこから、ベビーブーマーの消費は始まりました」
p22「この本で扱う「消費」とは、生きていくために必要のないものを欲すること」
p36「2011年『スペンド・シフト』(ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ、プレジデント社)
p45「吉本隆明さんが指摘していることですがー、80年代半ばに起きた週休二日制」→これを批判するということは要は「働いて稼げ」と言っている
p52「例えば、銭湯」
p58「「消費化」というのは、集団をばらけさせて個々人に分断することとほとんど同義」→マーケティングと逆では?
p60「「アノニマスな消費者」が当たり前になったころに物心ついた人たちは、見事なまでに、自ら匿名であることを選択」
p65「他人との差異を強調する唯一の指標が、「自分はいくら持っている」という所持金の多寡だけ」→差異化はそれほど単純ではない
p67「消費社会のなかで生きていると、売られているものしか望むことができなくなります」
p90「つくづく不思議だと思うのは、おカネという代物です」→時代なだけ
p97「『アメリカの反知性主義』(リチャード・ホーフスタッター、みすず書房)」→マッキンゼー書
p109「バーゼル合意」1988
p120「自分たちが伝統的にもっていた、いわざ「自然過程」を通じて培われてきた、封建的ではあるが贈与・互酬的な会社システムを、外からもち込んだ人工的なものでそっくり入れ換えようとしても、うまくいくわけがありません」
p126「穀物消費の多い日本は絶好の市場」
p127「いま日本では、このとき生まれた近代国家の概念を盾に、穏やかではない議論が噴出」「「普通の国」というのはとても都合のいい言葉ですが、そんなものは、世界中のどこにも存在したことはありません」
p131「ヨーロッパや日本で起きたことが示すのは、文明がある程度のところまで進展すると、自由や独立を望む個人が増え、伝統的な家族形態が解体へと向かって社会が変質するということです。そこで、女性の自立、晩婚化、結婚をしないという選択、核家族化などが進行して、人口が減り始めるという事態が起きている」→社会のスタート地点としては女性が自立していなことを暗に認めてしまっている
p138「必然的に仲間以外の者は敵という発想が身についている」→家族主義でよいことではないのか。
p169「地域の文化を守るには、こういう参入障壁があることが重要」
p170「「消費しない」ということではなく、「賢い消費」を実践するということです」
p171「スーパーではなく路面の個人店で買う人がいる町には強さがあります」「地元に対する愛着もあって少し高くとも我慢してその店で買う」「長い目で見たら、それが「賢さ」であり、自分たちの暮らしを守ることにつながります」「そうやって地域が一丸となって、利潤第一主義の巨大小売店の進出を阻むしかない」→無理がある。要は高くても買って欲しいというエクスキューズ
p179「岡山県は結婚年齢が比較的低く、・・・」
p180「ウォルマートのひとつの問題は、地域の小売業をなぎ倒していくことにありますが、もうひとつ大きな問題があります。それは、店の収益率が悪くなると、土地への愛着も何もないものですから、その地域からいとも簡単に引き上げてしまう」
p189「ブランドを消費者の側から見ると、消費者どうしの優劣を決める差別化指標として機能」
p198「450円のまま据え置きで、わたしは増税の日に受付のばあさんに、「大丈夫なの?」と思わず聞いてしまいました」→消費税を収めているのかそもそも?
p206「買ったらものすごく値の張るもjのを、贈与でやりとりする。商品経済と組み合わせたハイブリッドな交換システムを取り入れることで、生活の質を維持することができます」→最初に誰がどう買うのか。
p213「快適さとは要するに「変化しない」ということ」
p225「おカネがなくとも、暮らしていく術はあります。むしろ、人口が減少し、経済がシュリンクしていくこれからの日本では、おカネに頼ってばかりではいられなくなります。近くにいる人どうしが、助け合わなければ生きていけない時代が訪れつつある」→医療費は?
p228「おカネは必要ですが、おカネを持っている人はどこからか見つけてくればいい。とくに期待したいのが団塊の世代」

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