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2015/01/11

『新・戦争論』/池上彰・佐藤優

4166610007 新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)
池上 彰 佐藤 優
文藝春秋  2014-11-20

by G-Tools

 池上彰氏と佐藤勝氏の書籍は、衆院選前にどの書店に行っても目立つところに置かれていて、選挙前に読みたかったのだけれど果たせず、ようやく読めた第一冊目。

 民族・宗教の基礎知識に始まり、欧州・中東・朝鮮・中国・アメリカの現在の問題の読み解き方を対話形式で解説。情報の密度が高いので頭に入れるのに苦労しますが読みやすい文章なので読み進めるのに苦労することはありません。一歩踏み込んだ、戦略的な読み解き方をする技法をガイダンスしてくれるような内容です。

 最も印象に残ったのは第2章「まず民族と宗教を勉強しよう」の中で、佐藤氏が、イスラエルのネタニヤフの官房長を努めた知人の話を紹介しているところ。「国際情勢を見るときは、金持ちの動きを見る」という話。金持ちは、その時代その時代で、自分の資産を保全するための最善の策を模索し打っている。現代は、直接社会に還元するパイプを作ってしまっているので、再分配が偏るし国家も介在できない。この話は、ピケティの『資本論』に照らして考えられそう。もう一つ、ナショナリズムは社会的に持たざるものの上昇回路、という話は、富が集中し格差が拡大・固定した結果、社会的に持たざるものがナショナリズムによって先鋭化する、としても、今の日本の政治状況はナショナリズムが、格差拡大を志向する現政権を支える結果になっている、このメカニズムを考えるのも面白そう。

もう一つ、ピケティの解説書『トマ・ピケティ『21世紀の資本論』を30分で理解する!』でも、本著のあとがきでも、フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』は間違いだった、と断定されているところに、日経新聞でフランシス・フクヤマがインタビューされていた。ちゃんと突き合せて考えてみよう。

p17「支離滅裂がとくに顕著だったのが、集団的自衛権の問題」「ホルムズ海峡の国際航路帯の封鎖が議論されましたが、たとえ封鎖されても、日本の自衛隊は絶対に出動できません」「知らないで言っているとしたら恐るべき無知」「国際航路帯は公海ではなく、オマーンの領海を通っているから」

p24「そのアナロジーは、イスラエルでよく耳にしました」「安倍さんと岸(信介)さんの関係は、パパ・ブッシュと息子の関係と同じか」
p41「ポール・ニューマン主演の「栄光への脱出」」
p47「ダン・ブラウンの『インフェルノ』という小説が欧米で大ベストセラー」「要するに、人口は感染症によって調整するしかないんだ、ということを是認している」
p47「新マルサス主義」「人口爆発に対する恐れ」
p71「今の世界の普遍的な宗教は、拝金教」
p72「ビットコインという新興宗教も出て来て、それを従来の拝金教の国家がつぶしにかかってる」
p72「ナショナリズムという宗教」
p72「教育や訓練を受けていない人間が社会的に上昇するためには、とてもいい手段」「一部の人たちから、「きみ、よく頑張ってるね」と声をかけられ、金も集まってくる」
p73「社会的に持たざるものの上昇の回路になる」「まさにヒトラー」
p77「国際情勢の変化を見るときは、金持ちの動きを見るんだ」「昔から人口の5パーセントの人間に富は偏在」「東西冷戦の間は、共産主義に対抗するために、その5パーセントの人間が国家による富の再分配に賛成」「大富豪、あるいはIBMのような大企業は、自分たちの儲けの半分を吐き出さないとつぶされることを経験則でわかっている」「大金持ちが、ダイレクトに社会に富を還元するパイプをつくったわけだ。そこに政府は介入できていない」「世界の富は、国家を迂回して動いている」
p78「軍人が政治に関与できないような忌避反応が後天的につくられている。それは、金持ちたちが自分の資産を保全するために絶対に必要なメカニズム」
p79「短期的には、戦争をやる覚悟をもっている国のほうが、実力以上の分配を得る。これが困るところ」→一般社会の経済・企業活動でも同じ。ルールを逸脱したとしても、短期的には逸脱した者が実力以上の分配を得る。
p80「遠隔地ナショナリズム」「ナショナリズム論のベネディクト・アンダーソン
p82「カナダのエドモントン周辺に住んでいるウクライナ人約120万人の遠隔地ナショナリズムが関わっています」
p104「低賃金労働者や移民が入ってきて、EU諸国は、いま非常に社会が不安定」
p113「ベルギーの南北融和に手腕を発揮していたのが、ファン=ロンパイ
p147「嘘をついてもいいといのがルールに入ると、外交も政治もものすごく複雑になる」
p156「①北朝鮮国籍保有者の日本への入国禁止、日本から北朝鮮への渡航自粛などの規制、②10万円超の北朝鮮への現金持ち出しの届け出と300万円超の北朝鮮への送金報告の義務付け、③人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止、の3項目を解除」
p174「外交の世界では、国内的な説明についてはお互いに問わないという原則がある」
p191「尖閣問題を軟着陸させるウルトラCのシナリオはあると思います。日本が連邦制を布く」
p200「「耐エントロピー」というのは、前出のアーネスト・ゲルナーが『民族とナショナリズム』で述べているもの」「社会的差別をつくりだす構造」
p213「極論すると、民主主義が成立する国は限られていて、それは、相続が兄弟間で平等な国だけ」
p224「民主主義の危機ではなく、自由主義の危機」「民主主義が自由主義の領域を侵犯しようとしている」
p233「ウォール・ストリート・ジャーナルの日本語版」
p242「フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』のような、自由民主主義が到達点に達し、歴史が終焉し、退屈な時代になったという考えは間違っている」 

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