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2015/02/14

『時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?』/松岡真宏

479422088X 時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?
松岡 真宏
草思社  2014-11-20


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ITの浸透と進化によって、従来大きな価値を持ちえなかった「すきま時間」が価値を持てるようになった結果、今後、「時間」の価値がこれまで以上に大きくなる、それを「時間資本主義」と呼んで議論を展開しているのが本著。

「時間資本主義」という視点は薄々問題意識として持っていて、考えを深めることができていいタイミングで読めた。一方、このタイプの日本の書籍は大体、「サプライサイドの視点」-ビジネスを行う側が、時流をどう捉えれば今後自分たちは稼いでいけるのか、という視点で書かれていて、そういう時流となった結果、どのようなスタンスを取れば「社会」がより良くなるか、という視点がなく、本著も(時間資本主義で個人はどうふるまうべきかは書かれてはいるものの)あまりその視点はないところが残念。そのあたり、やはり先日読んだ『つながりっぱなしの日常を生きる』などは違うと改めて思う。

時間の使い方について、「効率化」という視点ではなく、「どれだけ自分が使いたいものに使える時間があるか」という視点。なので、従来からの富裕層はともかく、ホワイトカラーの高給層は今後そのポジションの維持のために「すきま時間」もすべて注ぎ込むことになり、「自分が使いたいもの」に使えないため生活の満足度は低下し、一方、現在のところ低所得者層と言われている層は、収入は少ないかも知れないが、「自分が使いたいもの」に使える時間は多いため満足度は高くなる。大雑把に言うと自分の理解はこのように纏まる。

問題意識は2点:

  • 公平性に関して。p97「銀行や市役所の窓口だって同じではないだろうか。あるいは病院の窓口も同様かもしれない。」「時間ごとにこの重要なパラメーターを合理的にいじることで、個々人の満足度を引き上げ、ひいては社会全体の厚生を引き上げることが可能になる」とあるが、特に福祉に関しては「格差」について慎重にならなければならないと思う。時間は再配分できないので、支払う額によって窓口対応のレスポンスに差をつけるというのは賛成できない。
  • ユニクロとバーニーズが引き合いに出され、富裕層は時間の重要性を理解しているので、定番品については選択する時間を極小化するために間違いのないユニクロを購入しているし、そのように決してユニクロは格差の象徴ではないと書かれているが(p114)、ユニクロとバーニーズ双方を楽しむ富裕層はいても、バーニーズを楽しむ低所得者層はいないので、この推論には問題がある。ただ、低所得者層でも月額1万円近く通信費に出費したり、高級ブランドに出費したりすることは確かになるので、そういう意味では格差が二極という捉え方が間違っているのかもしれない。低所得者層の中でも格差がある。

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2015/02/08

『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』/カレン・フェラン

4479794336 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
カレン・フェラン 神崎 朗子
大和書房  2014-03-26

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 木を見て森を見ずというのか、判らないことや未来のことを少しでも判ろうと精緻に精緻に分析し問題を定義し解決策を生み出し、というサイクルを回し続けた結果、トータルで恐ろしく失敗してました、ということをコンサルタントが詳細に具体的に語る一冊。

 自分の勤める会社が株主資本主義とコンサルタントを活用した経営の権化のような会社なので、最初から最後まで興味深く面白く読みました。インセンティブ制度とか、肌感覚的になんかおかしいよな、と思いつつも「成果主義」「実力主義」と言われると反論のロジックを組み立てられずもどかしくなるところを、明瞭に批判を加えられているところ等々、読みどころは数多いです。

 最もクリティカルだったのは、「現在、広く一般にはびこっている誤った考え方ー「数値データで計れないものは管理できない」(もちろん、できる!)」。肌感覚的になんかおかしいよな、と思いながらも既にすっかり洗脳されてしまっていた自分に気づいた瞬間。メトリックが必須、と言い切ってしまうと、その厳然たる姿勢、冷徹な響き、仮に数値が到達しなかった場合は己の責と受け止めると宣言しているような暗黙の了解、そういったものが入り混じって「プロフェッショナリズム」と錯覚してしまうが、数値は計測できるのは当たり前の話で、数値化できないものにどうトライしていくかのほうが遥かに困難で「プロフェッショナル」なのだ。

 本著も『仕事をつくる全技術』同様、具体策への落とし込みがきちんとあって、概念論で終わってません。特に「実験結果を見定める」と「結論を出す」と「ステップを繰り返す」の考え方は自分にとって重要と思った。PDCAサイクルとの差異を意識。実験結果と結論は違うものだということをよくよく理解する。ベストプラクティスの無効性にも繋がる。もう一つ興味深かったのはフランクリン・コヴィは無批判に登場したこと。全く触れていないので、一度読まないといけない。

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2015/02/07

『仕事をつくる全技術~トップ営業はこうして「稼げる案件」を生み出している』/大塚寿

仕事をつくる全技術~トップ営業はこうして「稼げる案件」を生み出している~
仕事をつくる全技術~トップ営業はこうして「稼げる案件」を生み出している~ 大塚 寿

大和書房  2014-09-14
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 本著と『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です』は、確か別々の時期に何かの書評で知って興味を持って府立図書館に予約をしたところが結構待って二冊同時に順番が回ってきた。この2冊を同時に今読めたのは幸運でした。この2冊は突飛なところのない、非常にオーソドックスな仕事に対するスタンスを、丁寧かつ具体的なアクションリストに落とし込んで説明されているので、自分が如何に基本を蔑ろにしているかを反省したし、「ビジネスを生み出す」という大きそうに見えるチャレンジも実は基本の積み重ねによって生まれるものだということを理解できたし、常々自分が思っていることの裏付けを得れたので自信にもつながった。

 特に本著で言うと、”p229「組織には「TAKE&TAKE」な人を上にはいかせない自浄作用というガラスの天井がある」”と述べられる章があり、これは事実でもありある種前時代までは事実だったという幻想ということもできると思う。ただ、こういう認識を社会全体で持つことが、社会をよりよくしていくための土壌だと思う。そういう意味でも、たくさんの人に読まれたらいいなと思った一冊。

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