『終わりの感覚』/ジュリアン・バーンズ
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終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス) ジュリアン バーンズ Julian Barnes 新潮社 2012-12-01 by G-Tools |
男はいつも「やり直せる」と思っている。頭では、口では、「もう年を取ったから」と言っていても、だ。主人公のトニーはその男の滑稽なセンチメンタルを冷静に存分に発揮してくれるが、その結果教えてくれるのは「取り返しがつかないものは取り返しがつかず、取り返しがつかないことに気づくのも取り返しがつかなくなってからだ」という、あまりにも「哲学的に自明」の事柄だ。
あまり若いうちに読んでも得るものの少ない小説だと思う。この歳になっても文学に触れる意義があることを、この歳だから触れることで意義を得られる文学があることを、バーンズが知らしめてくれた。
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