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2017/09/17

『終わりの感覚』/ジュリアン・バーンズ

4105900994 終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス)
ジュリアン バーンズ Julian Barnes
新潮社  2012-12-01

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 男はいつも「やり直せる」と思っている。頭では、口では、「もう年を取ったから」と言っていても、だ。主人公のトニーはその男の滑稽なセンチメンタルを冷静に存分に発揮してくれるが、その結果教えてくれるのは「取り返しがつかないものは取り返しがつかず、取り返しがつかないことに気づくのも取り返しがつかなくなってからだ」という、あまりにも「哲学的に自明」の事柄だ。

 あまり若いうちに読んでも得るものの少ない小説だと思う。この歳になっても文学に触れる意義があることを、この歳だから触れることで意義を得られる文学があることを、バーンズが知らしめてくれた。

p14「ベルトアンシャウウング」「シュトルム・ウント・ドランク」

p42「イギリス人って、真摯さについて真摯でないところがあるよね。それが実にいやだ」
p117「私たちは自分の人生を頻繁に語る。語るたび、あそこを手直しし、ここを飾り、そこをこっそり端折る」
p174「私は特別の悔恨に耐えながら」「傷つくことの避け方を知っていると思ってきた男が、まさにその理由から、いまとうとう傷つこうとしている」
p183「人生の終わりに近づくとーいや、人生そのものでなく、その人生で何かを変える可能性がほぼなくなるころに近づくとー人にはしばし立ち尽くす時間が与えられる」

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