『月曜日の友達 1』阿部 共実
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月曜日の友達 1 (ビッグコミックス) 阿部 共実 小学館 2017-08-30 by G-Tools |
数年前から薄々、「文学は最早小説じゃなくて漫画じゃなかろうか」と思っていて、それを硬派というのかやせ我慢というのかで押し殺して小説を選択してきてたのだけど、村上春樹が『海辺のカフカ』や『騎士団長殺し』で試行したように、現代(人)にとって「まとまった時間のなさ」というのはやっぱり大問題と思っていて、いつでもどこでも読めるようにという方向で時間を確保する手段として電子書籍は普及したけれど、それも過去の可処分時間を補うには至っていないと思うし、そうなると「早く」読み進めることのできる「漫画」のほうが、優れた物語媒体になるんじゃないだろうかと体感的に思う訳です。
そしてとうとう今年も末、「そういうベクトルで行動したほうがいいんじゃないか」と思っているところに年末特有の怒涛の「今年のベスト10」形式のプッシュリストがネットに出回る中、漫画も一際目に入ったのでこれはそっちに舵を切ろうと決心して一冊目に選択したのがこれ。
正直言って、僕は水谷のように、「目の前のその人のことを、全然何も知らない。もっと知りたい。」という自覚を持ったことが今までたぶん一度もないと思う。全然何も知らない、わからないことは当たり前で、それまでその人と過ごした時間や交わした会話で感じたものだけが自分にとってのその人の全部なんだと疑わずに生きてきたタイプだ。それもぼんやりそうだとしているだけで意識している訳ではない。どちらかというと月野のようにヒーローになりたいタイプだった。だけど、自分のことをわかってもらえない、だから自分の居場所がここにもそこにもない、という感覚はかろうじて持っていたし持っている。それを誰かにわかってもらおうと努力したことはほとんどない。だから、水谷と月野が心を開いていくその過程は胸に刺さってくるものはあるけれど、その感覚は他の読者が感じるそれよりもずいぶんと薄いものなんだろうなあと思ってがっくりくることが読んでいて何度かあった。
後、小説と漫画で言うと、漫画は1冊じゃたいてい終わらないんだよね…そこが問題。
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