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2019/06/04

『反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』/ナシーム・ニコラス・タレフ

有限責任というのはよくできた酷いシステムなんだなあと改めて認識した。インセンティブベースと言って、アップサイドはあってもダウンサイドはないというのが諸悪の根源というのはよく理解できる。失敗したってお咎めはないのだ。「脆さを移転する」。こういうことをやりますよ、と言ってお金を集めておいて、失敗しても返さなくてもいい。その代わり、成功したら配当しないといけないと言ったところでマイナスにはならない訳で。とにかく何でも足して足して…という思想から脱却しないといけない、というのは強く感じた。起業家など、リスクを取る人を讃える傾向にあるけれど、起業家にも様々なタイプがいて、高揚感を感じられるからその起業家がよい起業家と言えるのか、事業は着実に進められるからその企業家がよい起業家と言えるのか、それはまた別の話なのだ。そして、その起業家を支援する投資家もまた、リスクをとっているようで実は脆さを移転しているだけで、大きな経済が大崩れしないことが最重要なので倫理に反する政治状況や社会状況であっても安定しているのであればそれを支持するのでよいとは言えない。彼らも脆さを他者に移転しているだけなのだ。

ただ、前編の感想でも書いたけど、『FACTFULNESS』的な世界観と全く相容れない。どちらも正当性がある。だから、個々人自分のなかで落とし前をつけないといけない。

p61 「ウェイト・リフターなら経験的に知っていることだ。50キロを1回持ち上げるほうが、25キロを2回持ち上げるより効果があるし、・・・非線形的な(凸な)効果をもたらす。」
p116 「現代ほどデータの豊富な時代はないのに、世の中はかつてないほど予測不能になっている。・・・ポール・ヴァレリーがこんなことを記している。「行動するたえには、いったいどれだけのことを無視しなければならないのだろうか」→フレーム問題、何を捨てるか
p116 「少ないほど豊か」「ベルクソンの剃刀」
p128 「技術屋の特徴は”エンジニアリング頭脳”だ。もう少しあからさまに言わせてもらえれば、自閉症的傾向だ」「文学的素養がないというのが、未来に対して無知な人間の特徴だ」
p137 「カール・ポパーが「歴史法則主義の誤謬」と呼んだ大きな問題の見事な例を見出した」「過去のない人間に未来はない」
p153 「『ビジョナリー・カンパニー②』みたいな本で「最高」と称される企業は、だいたい期待を下回る」
p201 「幸福は否定の概念で説明するのがいちばんだ。幸福にも非線型性が当てはまる。現代の幸福の研究者たちは、幸福について説くときに、非線型性や凸効果をまったく考慮していない」
p202 「昔の生活環境にはなかった製品を取り除くことで、健康になる人たちの例はたびたび報告されている」
p206 「「否定の道」という引き算的な視点を持てば、私たちはもっと強く、そしてもっと豊かになれる」
p207 「宗教 対 浅はかな干渉主義」
p230 「ラルフ・ネイダーは単純なルールを提唱している。戦争を支持するものは、少なくともひとりの子孫(子どもか孫)を戦場に送らなければならない」→安全地帯からモノを言うやつが一番悪い
p240 「「推定するのが難しいくらい小さい」・・・この種の発言こそ、経済界が希少な事象に対するエクスポージャーを高めた元凶」
p251 「他の作家が著作権やロイヤリティの話をしていると、マルローは話題を神学に移そうとしたという」
p258 「このシステムが「インセンティブベース」などと呼ばれ、資本主義的だと思われていることだ」「アップサイドはあってもダウンサイドはない」
p270 「商売につながるのは道義心だけだ。どんな商売であっても」
p281 「市民が公共の最大の利益のために雇った取締官や公務員が、あとになって法律事務所のような民間会社に入社し、職務で得た専門知識やコネを利用してシステムの欠陥を衝き、利益を得ることができる」
p286 「統計に頼る科学の多くは、まず当てにならない」
p292 「他社の犠牲の上にあるオプション性を廃絶し、そうやって反脆さを手に入れる人たちを減らす」

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