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2019/09/07

『真実の終わり』/ミチコ・カクタニ

盲目的だったと思いたくはないけれど、僕らの世代はなんとなく、米国が間違えるはずがないという固定観念を抱き過ぎていたのかもなあと少し思った。様々な書籍を読みながら、一般的に流布される米国のイメージは歴史上かつてはそうではなかったということを何度も学んできたはずなのに。今の米国の有様は、時代の最先端ではあるだろうけれど、米国もただの「国」だったと改めて思い知らされた。
ポストモダンが、その相対主義が悪用されたという分析。そしてポストモダンは当初は権力への対抗だったかもしれないが、そもそも「破壊」することしかできない思索だった、という分析。これはなるほどと思うと同時に非常な衝撃を受けた。ポストモダンに洗礼を受けながら社会に出た世代としては、バックグランドの全否定に限りなく等しい。けれど、ポストモダンが「破壊」しかできない思索というのはなんとなく感じていて、状況に対抗するためには、相手側がいうところの「生産性」のある思索が必要だと常々思う。
そして、敵はやっぱり「倦むこと」。反復されると麻痺する。けれど、麻痺してはいけないのだ。そして、時制が言ったもん勝ちなら、やっぱり言わなければならないのだ。言って争いになることにめげるメンタリティではならない。飽きずに争い続けなければならない。声の大きいものが勝つ世の中ではならない。だから大きい声を出さなければならない。それはけして術中に嵌っている訳ではない。

 

p12「「誰もが自分なりの意見を主張する資格を持つが、自分なりの事実はない」というダニエル・パトリック・モイニハンの著名な考察
p16「彼らが設計した憲法の構造は、権力の抑制と均衡という合理的な仕組みに基づいていた」「アレクサンダー・ハミルトンの言葉を借りるならば、「私生活が破廉恥」で「気性の荒い」人物が、ある日「人気の棒馬にまたがって」登場し、「その時代の熱狂的な信者におもねって、その馬鹿げた考えと一体化」して、政府の機能を損なう可能性に対抗するためだった」
p28「疾病予防管理センターの分析官に対し「科学に基づく」「根拠に基づく」という表現を止めるよう支持した政権」
p35「右派ポピュリストによるポストモダン的議論の流用、その客観的実在の哲学的否認の採用」
p36「学界における公式見解の失墜に中心的な役割を果たしたのは、ポストモダニズムとして広く括ることのできる思想の集まりだった」
p41「アラン・ブルームは相対主義に憤慨し、60年代のキャンパスでの抗議行動を「献身が科学より、情熱が理性より重大なものだと考えられている」として避難した」
p43「まさに全体主義が破壊する対象」「ナチスの思想は明確に、『真実』の存在というものを否定する」
p46「トランプの代理人は日本の安倍晋三首相の補佐官に「トランプ氏の公の発言を逐語的に受け止める必要」はないと話した」
p52「近視眼的に娯楽に没頭し、しばしば市民としての義務を放棄する米国人の傾向は、何も新しいものではない」
p60「一握りのいわゆる専門家をかき集め、確立された科学に対して意義を唱えるか、もっと研究が必要だと主張させる」
p66「「人民の敵」は、かつてレーニンとスターリンによって使用されたぞっとする表現」
p70「トマス・ピンチョンの小説」
p74「フランソワーズ・トム」「「ぎこちない言語」の特徴」「抽象化、具体的なものの回避、トートロジー、下手な喩え、世界を善悪に振り分ける二元論」
p102「イーベイの創業者ピエール・オミダイアは「情報のマネタイゼーションと操作が、我々を速やかに引き裂いている」と述べ、説明責任や信頼、私たちの民主主義にソーシャルメディアが及ぼしている影響について白書の作成を命じた」
p104「トランプ陣営はまた、(受信者にしか見えない)いわゆるダーク・ポストを使い、投票を抑制する三つの工作を行った」
p107「ロシアのアカウントは特別検察官ロバート・モラーと彼によるロシアの選挙介入に関する調査を妨害することに、専ら集中しているように見えた」
p117「ロシアの民主化運動指導者ガルリ・カスパロフが2016年12月にツイートしたように、「現代のプロパガンダの核心は、誤った情報を伝えてアジェンダを推進するだけでなく、批判的思考を疲弊させ、真実を消滅させることである」
p118「T・S・エリオットの言葉を借りれば、「この喧騒の世界」で人々は「気を散らすものから気を散らすものによって気を散らされる」のである」
p122「米国もまた、拡大するカオスから「強い権力」によって引き抜かれるのを待っていると不吉に述べている」
p127「『ファイト・クラブ』」「ミシェル・ウエルベック」

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