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2020/05/17

『WHO YOU ARE』/ベン・ホロウィッツ

単純な興味で、ウチのCEOが今のAppleをどう思ってるのか、p68を読んで聞いてみたくなった。短いけれどもIT業界には歴史がある。経験ではなくて歴史から学ばなければいけない。

真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる、このリードがすべてと言ってもいいくらいよくできてる。日々リーダーシップに逡巡を続ける日々なので指針としてとてもありがたかった。「ここは違うんじゃ?」と言いたくなるところはひとつもなかった。自分ができるかできないかは考えず、身につけようと思える文章だった。

具体的なアドバイスとして生きるのは「ショッキングなルールをつくれ」というもの。わかりやすいルールではなく、自分の思いをチームに浸透させるためには一度聞いたら忘れないようなショッキングなルールをつくれというもの。そこに至るためには自分の思いを深く突き詰めて本質に至っていないとできないのでこれは厳しいけれども取り組みたい。

それと「徳」。この概念は非常にクリアになった。何か別の本でも「理屈で考えるな」というのを最近目にした。徳に理屈がないというのではなくて、教条に固執して進めるのではなく、真の言葉と行動で文化を形作っていく、ということだと思う。

 失敗があだになり、責任を厳しく追及されるような文化を思い浮かべてほしい。東洋ではよ く見られる文化だが、重役は自身の立場を守ることに汲々とし、どんな犠牲を払っても失敗を 避けたがる。では、9割がた失敗しそうだが、成功すれば1000倍の見返りがあるアイデア を思いついたとしよう。賭けとしてしてはこの上なく割のいいものであっても、失敗に罰を与 えるような企業はそんなアイデアに絶対に資金を出さない。

1997年にスティーブ・ジョブズがアップルに復帰したとき、アップルは傾いていた。潰 んそうこなっていたのだ。 ジョブズがクビになった1985年に3パーセントだったマーケッ・3パーセントにまで落ち込み、現金は四半期分しか残っておらず破綻がすぐ 目の前だった。ライバルだったマイケル・デルは、アップルをどう立て直すべきかと聞かれて、 「私なら会社を畳んで株主にカネを返すね」と答えたほどだった。

1998年、ダイアン・グリーンは仮想オペレーティング・システムのVMウェアを共同創 業した。この会社が成功するかどうかは提携がうまくいくかにかかっていた。しかし、折しも この分野で提携の大失敗事例が起きたばかりだった。デスクトップのOS事業でIBMと提携 したマイクロソフトが、IBMを押しのけてひとり勝ちを収めていたのだった。VMウェアの ような独立系OS企業が「ウィン = ウィン」の関係を持ちかけても、相手は警戒するばかりだ ろう。

ラウドクラウドを立ち上げたときには、ユーザーから引く手あまたで、需要に追いつくこと を最優先に文化をつくった。だから、権限を委譲し、成長の障害になるものを取り除き、働き やすい職場にすることに力を入れた。だが、エンタープライズソフトウェア企業として成功す るには、つまり大企業に我々のプラットフォームを売り込むには、危機感と猛烈さと正確さの 際立つ文化をつくらなければならない。そして、そんな特徴を持つリーダーを外から雇い入れの

1 能力がある(コンピタンス)――プロダクトの専門知識があり、知識を証明するプロセスがなければならない(相手のニーズと予算を調べて買い手になれることを確認し、購買基 準を一緒に決めてあげ、同時にライバルを罠にはめ、相手の社内の技術者や購買部にも気に入られるなど)

2 自信を持つ(コンフィデンス)――自分の視点を堂々と打ち出すこと

3 勇気を持つ(カレッジ)

4 信念を持つ(コンビクション)

売り込みに成功するにはこの4つが必要であり、これがあれば、相手から買わない理由を説 得されることはない。

ヒラリーは、そんなふうにおおやけに過ちを認めて間違いを修正することなど考えもしなか ったようだ。アメリカ政治における鉄の掟は、「間違いを認めるな」(ほとんどの政治家を心か ら尊敬する気にならない理由のひとつはこれだ)。ヒラリーは著書の中で、不注意だったこと は認めているものの、それほど自分に責任はないとも言っている。

価値観 は単なる信条だが、徳とは人間が努力し体現する行動だ。いわゆる「企業理念」に意味がない のは、それが行動ではなく信条しか表していないからだ。文化を築くにあたって、あなたが何 を信じているかはどうでもいい。あなたが何をするかに意味がある。
「武士の4誓願」もまた、行動を説くものだ。
一、武士道に於いておくれ取り申すまじきこと (武士道を誰よりも率先して実践しなければならない)
一、主君の御用に立つべきこと (主君に忠誠を尽くさなければならない)
一、親に孝行仕えるべきこと (敬意をもって両親に孝行しなければならない)
- 、大慈悲を起し人の為になるべきこと (思いやりの心で他人を助けなければならない)
武士の知恵をまとめた最も有名な武士道の著である『葉隠』では、こう教えている。 「剛腸と言う物は平生当りて見ては当らす。別段に有物也」 (勇気があるか臆病かは平時にはわからない。何かが起きたときにすべてが明らかになる)

私のメンターのビル・キャンベルは、かつてこう言っていた。「働 くのはお互いのためだ。一緒に働く人をどのくらい気にかけているか? 社員をがっかりさせ たいか?」 「あなたの目的が死を意識することであっても、お互いのために働くことであっても、仕事そ のものに意義があるということが、企業文化をまとめる接着剤になる。

武士の心得

「武士の規範は、8つの徳に基づいている。義、勇、仁、礼、克己、誠、名誉、そして忠義だ。 すべての徳には細かい定義があり、一連の原則と実践と逸話を通して補強されている。

今のアメリカ人は、この国に共感が欠けているとツイッターで愚痴るばかりだ。そのくせ、 どうして共感が減り続けているのかと不思議に思っている。怒りが積み重なっても、文化には ならない。文化は行動の積み重ねだ。競争の激しいビジネスの世界では、礼儀などかなぐり捨 ててかまわないように思える。だが、侍が一連の行動を礼儀として定義し、愛と尊敬を表すた めに礼儀を実践していたことに、学ぶところは大きい。

自分たちの文化を自分が尊重できないようなら、誰にも自分を信じてもらえなくなる。こ の団の掟は俺の本心から出た掟だった。俺はその掟を信じていた。守り続けたいと思った。 その気持ちが組織文化をいい方向に向かわせた

アマゾン には、「バーレイザー」と呼ばれる人たちがいる。バーレイザーの役割は、候補者がアマゾン の経営哲学を理解しているか、またその人が企業文化に合う人材かを面接で確かめることだ。 カギになるのは、バーレイザーになる人は採用チームの一員ではなく、特定の候補者へのこだ わりがないという点だ。バーレイザーの役割は純粋に文化的なものだ。バーレイザーは2つの 面で役に立つ。ひとつは、企業文化に合う人を選別すること。もうひとつの、さらに大切なこ とは、候補者全員にアマゾンで企業文化がいかに重要かを知らしめることだ。

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