2017/02/04

『<インターネット>の次に来るものー未来を決める12の法則』/ケヴィン・ケリー

4140817046 〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則
ケヴィン・ケリー 服部 桂
NHK出版  2016-07-23


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  • 一番印象に残ったのは"FILTERING"。少し他の章と混同しているかもしれないけれど、情報は複製容易ということもあり今以上にどんどん流れるようになり、もはやストック仕切れないものとなり、今眼前に現れた情報だけが知覚の対象となるようになる。そうなると、何を選ぶかというより何を選ばないか(FILTER)が重要となり、そのフィルタが個人の個性そのものとして認識されるようになるだろう、という説。
  • ACCESSINGは、デジタル・トランスフォーメーションと業界で言われていることの具体的な理解ができるようになったと思う。
  • 情報が圧倒的な量になりその希少性がなくなったとき、価値があがるのが人間が注意を払っているという情報。
  • 答えの質量ともに飽和した世界では、質問の仕方ーQuestioningが最大のちからを持つ。

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2017/01/08

『テロルの真犯人』/加藤紘一

4062137380 テロルの真犯人
加藤 紘一
講談社  2006-12-19

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改憲・安保法制に始まり日本会議周辺の読書を続ける中で知った一冊。2006年ということは10年前で、10年前の時点ですでにこんなにも状況は悪くなっていたということに驚くとともに自分の意識の低さを恥じる。

一番のポイントだったのは、2006年7月20日付けの日経新聞の昭和天皇発言メモに関する部分。これは私もよく覚えている。元宮内庁長官・富田朝彦氏のメモで、昭和天皇が東條英機らA級戦犯の靖国神社合祀に明確に不快感を示し、そのあとで、「それが私の心だ」と述べられたというメモ。まず、実際にそれ以降昭和天皇は靖国神社を参拝していないことからメモの内容は正しいと思えるので、これを捏造と言う側のほうが何らかの意図を持っていると考えるのが自然。次に、靖国神社そのものの性格で、靖国神社を擁護するポジションの人々は、日本人の国民性には亡くなった方はその立場の違いや考えの違いに関わらず「英霊」として崇敬する精神があるというが、”靖国神社は政府軍、官軍、与党軍のための神社である。つまり、同じ日本人の戦死者でありながら、時の政府側すなわち天皇陛下の側に敵対した戦死者は排除されている”(p208)のであり、決してすべての戦死者を均しく扱っていない。むしろ、「太平洋戦争での犠牲戦死者」を祀っていることを言わば「人質」にとり、強硬にA級戦犯を合祀して話を混濁させているだけだと思う。おまけに、その「敵味方の線を引く」基準である天皇陛下の意向は無視する。

ニクソン訪中の際、事前にその情報を伝えられなかった理由を「日本は機密を守れない国である」と言われたトラウマが、特定秘密保護法の遠因なのかもしれないが、日本の政治のおよそ汚いところは、そういう切実な要件を利用して国民の権利をなんとか制限しようと働くところ。「日本の価値の混迷をもたらしたのは、明治維新そのもの」(p231)という観点は思った以上に重要。

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2017/01/02

『外資系経営人材開発コンサルが教える 役員になる課長の仕事力 グローバル時代に備える思考術・行動術』/綱島 邦夫

4820719327 外資系経営人材開発コンサルが教える 役員になる課長の仕事力 グローバル時代に備える思考術・行動術
綱島 邦夫
日本能率協会マネジメントセンター  2015-08-29

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 本著を探し出すに至った経緯はけして昇進の野心によるものではなく、むしろほぼその機会が永久に失われたという現実を受け入れられたので、その世界の一般常識としてどういう事柄が昇進に必要とされていたのか、というのを知ろうと思ったからだった。
 自分にとっての最大のポイントは「組織マネジメント力」だった。自分が敢えて「組織マネジメント力」から距離を置いていたことがよくわかった。逆に、本著で「組織マネジメント力」がどういう要素に分解でき、それを伸ばすためにどういった行動が必要かということも理解できた。現状の自分にその活用を当てはめた場合の課題は、やはり制約が大きすぎて、組織編制に関しては何もできないというところと、数値主義に傾き過ぎていて能力を伸ばすというカルチャーを醸成すること自体がチャレンジということだろう。
 PDCAとPOIMの違いは常に意識することになると思うし、ステージや舞台が変わったとしても頭の中にいつも入れておこうと思う。

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2016/07/21

『日本会議の研究』/菅野完

4594074766 日本会議の研究 (扶桑社新書)
菅野 完
扶桑社  2016-04-30

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 一番判らないのは、日本会議はなぜ天皇統治を実現する憲法改正を掲げないのか、ということだった。彼らの情熱が、(あるのかないのか判らない)「古来伝統の日本」の復活を目指すというなら、その姿は天皇による統治でしかないと思う。それもちょっとよく考えてみると、実際に天皇が政治を行っていたのって何時代までだっけ・・・?となるのだけど、それでも「古来伝統の日本」と言い、神道の世界観を持ち出すなら、やはりその「古来伝統の日本」の姿は天皇による統治国家で間違っていないと思う。

 だけど、日本会議が執心しているのは優先度から順に、緊急事態条項の追加、家族条項の追加、自衛隊の国軍化となっていて、基本的人権の制限等々重大な問題があるにせよ、天皇主権は見当たらない。つまり、「古来伝統の日本」とか神道とかを担ぎ出すけれども、目指したいのは天皇の権威だけを利用した明治の統治体系であり、大日本帝国憲法の復活で、彼らが目指しているのは「古来伝統の日本の復元」でも何でもなく、大日本帝国憲法の復活による独裁政権体制なのだ。

 安東巌のように、「谷口雅治先生はこう言っている・・・」と他人の権威を間接話法で利用するスタンスは、直接自分の言葉で語らないその理由を考えるとわかるように、必ず悪意を伴っている。自分の言葉で語らないのは、責任を負いたくないからであり、自分の言葉では他人を動かすことのできない卑小な言葉しか持ち合わせないからだ。摂関政治から始まる、天皇の威を利用する政治のように、誰かの言葉を利用するスタンスは悪意に満ちている。正面切って行動できない目的を達成するために他人の権威を借りるのだ。だから日本会議も、天皇を元首に留めて、天皇を主権とせず「権威を利用できる対象」に留めて独裁体制を実現したいのだ。第一、他人の言葉の借用は、その解釈はどうにでもできるから絶対に単純肯定してはいけないものなのだ。ちょうど、日本会議の支援を受けている現内閣が解釈改憲という手段を実際に行使したじゃないか。

 しかし、安東巌しかり伊藤哲夫しかり百地章しかり椛島有三しかり、家族家族というけれど自分たちは家族をどれだけ大切にしているのだろう。そもそも、天皇主権なのかどうなのかに考えが及んだけれど、彼らの改憲への情熱はそんな高尚なものではなくて、学生運動の時代に日陰を歩んだ怨恨、日本国憲法が定める自由を謳歌できなかった、いわばイケてるグループに入り込めなかったイケてない連中が、その悔しさやるせなさを晴らしたくて、自分たちが慣れ親しんでいてシンパシーを感じる大日本帝国憲法を復活させたい、と思っているだけだと思う。

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2015/02/08

『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』/カレン・フェラン

4479794336 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
カレン・フェラン 神崎 朗子
大和書房  2014-03-26

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 木を見て森を見ずというのか、判らないことや未来のことを少しでも判ろうと精緻に精緻に分析し問題を定義し解決策を生み出し、というサイクルを回し続けた結果、トータルで恐ろしく失敗してました、ということをコンサルタントが詳細に具体的に語る一冊。

 自分の勤める会社が株主資本主義とコンサルタントを活用した経営の権化のような会社なので、最初から最後まで興味深く面白く読みました。インセンティブ制度とか、肌感覚的になんかおかしいよな、と思いつつも「成果主義」「実力主義」と言われると反論のロジックを組み立てられずもどかしくなるところを、明瞭に批判を加えられているところ等々、読みどころは数多いです。

 最もクリティカルだったのは、「現在、広く一般にはびこっている誤った考え方ー「数値データで計れないものは管理できない」(もちろん、できる!)」。肌感覚的になんかおかしいよな、と思いながらも既にすっかり洗脳されてしまっていた自分に気づいた瞬間。メトリックが必須、と言い切ってしまうと、その厳然たる姿勢、冷徹な響き、仮に数値が到達しなかった場合は己の責と受け止めると宣言しているような暗黙の了解、そういったものが入り混じって「プロフェッショナリズム」と錯覚してしまうが、数値は計測できるのは当たり前の話で、数値化できないものにどうトライしていくかのほうが遥かに困難で「プロフェッショナル」なのだ。

 本著も『仕事をつくる全技術』同様、具体策への落とし込みがきちんとあって、概念論で終わってません。特に「実験結果を見定める」と「結論を出す」と「ステップを繰り返す」の考え方は自分にとって重要と思った。PDCAサイクルとの差異を意識。実験結果と結論は違うものだということをよくよく理解する。ベストプラクティスの無効性にも繋がる。もう一つ興味深かったのはフランクリン・コヴィは無批判に登場したこと。全く触れていないので、一度読まないといけない。

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2015/01/25

『つながりっぱなしの日常を生きる: ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの』/ダナ・ボイド

つながりっぱなしの日常を生きる: ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの
つながりっぱなしの日常を生きる: ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの ダナ・ボイド 野中モモ

草思社  2014-10-09
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ティーンが、親が肩越しにSNSをしている画面を覗くことに対して不快感を示すという至って当たり前、だけど何でもかんでも法律やルールがなければ「できることはやっても問題ない」という世の中にあって、「この問題は技術的なアクセス状況がどうあれ、むしろ社会的行動規範とエチケットの問題」と明快に言葉で表現された箇所に少なからず感動した。できるからと言ってやるかどうかは、人間性を左右する。日本では、よくわからない因習やしきたりに悩まされた世代が、それらを一気に打ち破った時代と、アメリカ社会の特徴の一部である訴訟主義・ルール偏重が入り込んで、「できることはやっても問題ない」という風潮が蔓延したけれど、だからと言ってそれをやるかどうかは「社会的行動規範とエチケットの問題」なのだ。ここで気を付けないといけないのは、この「社会的行動規範とエチケット」を、時計の針を逆戻りさせ、旧式の権威主義を復活させる口上にしてはいけないということだ。新しい社会的行動規範とエチケットを志向するものでないといけない。

それにしても、至る所で「コンテクスト」ー文脈が登場することに驚きを禁じ得ない。そして、アメリカにおいて文脈に注目が集まる理由の一つが、本著では人種や格差として登場する。同質であることはレジリエンスにとっては有利だけれど、その分どうしても「文脈」が増えてしまう。日本はハイコンテクストと言われたが、アメリカもハイコンテクストに近づいている。

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2015/01/01

『コンテキストの時代ーウェアラブルがもたらす次の10年』/ロバート・スコーブル シェル・イスラエル

4822250474 コンテキストの時代―ウェアラブルがもたらす次の10年
ロバート・スコーブル シェル・イスラエル 滑川 海彦
日経BP社  2014-09-20

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テクノロジーの進化がもたらす時代変化の予想はこれまで何冊も読んできたけれど、今回初めて「こうやって時代は作られていくんだなあ」というのを実感した一冊。こういった書籍は、予測と推測から導いた予想図を、予想ではなく確信として著されているのであって、その説得力が高ければ高いほど共鳴する人が多くなり、時代はその方向に進むということなのだと。株と似ている。

コンテキストの活用に、予想も含まれているのだろうか?「渋滞なし」というサジェスチョンをするコンテキストシステムは、それを見てそのルートを選択するユーザの増加も見越して「渋滞なし」なのだろうか?大量に集められたコンテキストデータは、それも含めてサジェスチョンするということなんだろうか?そこは少し理解しきれなかった。

ペイトリオッツの例は、結局のところ、富裕層にマーケティングが集中するということを言っているように聞こえた。フリーミアムと相まって、その収益構造でサービスが普及していくのは望ましいように思う。これは、どちらかと言うと行政に応用されないだろうか?富裕層に適切なサービスを提供することで上がる収益でもって、地域行政全体の財政の大半を賄う、というような。

個人の精神面を自動送信するのはもっと危険なことと取り上げてよかったと思う。落ち込んでいる状態を捉えられて、例えば宗教勧誘があったりした場合、どんな結果になるだろう?

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2013/10/27

『鈴木忠志対談集』/鈴木忠志

私が「アート」「芸術」について書かれたり話されたりしているのを見聞きしたときに浮かぶ疑問についてのあらゆることがこの本に書かれていた。私のようなアートや芸術にほとんど知見のない一般市民が抱いている疑問が網羅されているというのは物凄いことだと思う。通常、その道の専門家の方というのは、一般市民の素朴な疑問は既に彼方に置き去りにしていることが多く、一般市民の素朴な疑問に対する答えも持ち合わせている人というのは、その道を追求しきっている人だと思うから。

金森譲との対談『「芸術家」は公共の財産である」から:
  • 身体に対する「言葉」をもつ。自分の関わっている事柄に対して、明晰にかつ深耕した説明のできる「言葉」を持たなければならない。このことについて、自分は、ITというのはITを触れていない人にとって専門用語が多く理解しがたいものなので、できる限り専門用語を使わない説明を指向してきた結果、ITに関わる明晰で深耕した「言葉」の獲得が等閑になっていたきらいがあると反省。
  • 集団活動のための方法論と共同意識。ある特定の目的の下にある集団活動のためには、共通の「言語」を持たなければならない。共通の「言語」を持つためには、その活動に関わる「基礎」が共有されてなければならないが、日本ではその「基礎」がおざなりにされる傾向がある。それは、舞踏の場合は、その「基礎」練習に時間をかけられないという経済的な制約に由来する。なぜ時間を掛けられないかというと、舞踏に限らないことだけれども、つまりは「芸術」で生活を成り立たせるのが難しい環境だからであり、日本人の文化レベルの問題になるかもしれないが、もう一方で「芸術」が公共財であるというコンセンサスが醸成されていなからでもある。芸術は「公共財」であるというコンセンサスが成り立つことで、自治体の財源を利用することが可能という筋道を立てることができる。
  • もうひとつ、「基礎」練習がおざなりになる理由として、日本では「素人」であることも表現のひとつであるという土壌ができあがってしまった。これは、「専門性」のヒエラルキーの害悪に対するサブカルチャー、アンダーグラウンドのムーブメントが一定の浸透を見たからだと思う。その結果、訓練されない「あるがまま」も表現のひとつとなってしまった。このことに対して徹底的に異議を唱え続けることも一つの方法だと思うけれど、私は鈴木氏が述べている「差別されることに自覚的であるか」というスタンスを習得したい。歌舞伎は身分的・社会的に差別的な位置におかれていたが、そこで異常なことを自覚的にやっていることで発露する芸術性というものがあり、メッセージ性というものがあった。これが、ヒエラルキーの害悪を回避しつつ、エネルギーを保ち続ける方法論のひとつだと思う。社会的に「素晴らしいことをしている」「正しいことをしている」という賞賛を得つつ、経済的にもメッセージ的にも成功したい、という強欲が芸術を失墜させているのではないか。

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2013/10/10

『恋しくて』/村上春樹

■「テレサ」デヴィッド・クレーンズ

二作続けて学生時代の恋愛が描かれた作品だったことが少し意外だった。村上春樹がチョイスすると聞いて、学生時代の恋愛をイメージしていなかったから。でも考えてみればノルウェイも学生時代だし、そんな変なことではないか。学生時代の恋愛というといくつかの定型パターンがあって、そういう「すぐイメージできるパターン」を読みたくないから、あまりイメージしていなかったのかもしれない。
この話はとても短くて、かつ、状況が日本ではイメージしにくい(けれどもかの国では誰もがイメージできるような)状況がポイントになっているので、具体的な状況のひとつひとつが胸に迫ってくるわけではなかったけれど、アンジェロの「大人」になっていく様が胸に迫ってくる。いつから自分はこういう伸びしろがないとあきらめてしまったんだろう、と。
4120045358 恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES
村上 春樹
中央公論新社  2013-09-07

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2013/05/07

『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』/翁 百合 西沢 和彦 山田 久 湯元 健治

4532355435 北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか
翁 百合 西沢 和彦 山田 久 湯元 健治
日本経済新聞出版社  2012-11-16


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  • 最も印象に残ったのは、今までやってきたことをいかに止めるか、その止めやすさの醸成がカギだということ。
  • TV番組で、フィンランドの子どもたちの「将来どんな仕事をしたいか」の第三位が「なにもしたくない」だったというのを聞いたから、世代によって柔軟に変更していかないといけないということだろうか。

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2013/05/01

『知の逆転』/NHK出版新書

4140883952 知の逆転 (NHK出版新書 395)
ジャレド・ダイアモンド ノーム・チョムスキー オリバー・サックス マービン・ミンスキー トム・レイトン ジェームズ・ワトソン 吉成真由美
NHK出版  2012-12-06


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第五章 サイバー戦線異状あり-トム・レイトン

  • 自分の勤める業界の話なので非常に興味深かった。
  • 起業に至るプロセスの描写がとても良かった。起業を考えている人には、こういうドキュメンタリを勧めるほうがよいと思う。
  • チョムスキーが「資本主義に政府の介入は絶対に必要」と言っていたのが重なる。
  • プランをつくることの重要性。

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2013/04/30

『知の逆転』/NHK出版新書

4140883952 知の逆転 (NHK出版新書 395)
ジャレド・ダイアモンド ノーム・チョムスキー オリバー・サックス マービン・ミンスキー トム・レイトン ジェームズ・ワトソン 吉成真由美
NHK出版  2012-12-06


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第三章 柔らかな脳-オリバー・サックス

  • 常にフルパフォーマンスを出せるのが一流という考え方もあるが、偏頭痛のような、ハンディキャップの存在によって成立している特殊能力というのもある。
  • 宗教の必要性。「実践者であるが信仰者ではない」という表現は優れている。
  • 幻覚について用語が多数存在しているのに驚く。
  • 環境と遺伝は明確に分けられないものになりつつある。

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2013/04/29

『知の逆転』/NHK出版新書

4140883952 知の逆転 (NHK出版新書 395)
ジャレド・ダイアモンド ノーム・チョムスキー オリバー・サックス マービン・ミンスキー トム・レイトン ジェームズ・ワトソン 吉成真由美
NHK出版  2012-12-06


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第四章 なぜ福島にロボットを送れなかったか-マービン・ミンスキー

  • コンピュータの知能を上げる研究は、もっぱら統計的なものによってきたが、統計分析のためのソースデータの規模を上げることはできるが、結果の向上は限界にきているという。これはビッグ・データに対するスタンスを一段深める。現状でも、ビッグ・データは分析手法が課題であるということは理解されつつある。
  • 叡智というのは個人知能に依存するという話。少なくとも科学の世界ではと書かれているが、これは一般化できることだろうか?ジャレド・ダイアモンドによれば、個人レベルでの優れた判断をそれほど重要視していなかった。ミンスキーは、集合知能は「間違うことも多い」と、ジョージ・ブッシュが勝利した大統領選を例に出して繰り返し言う。
  • ゆっくり考えることの重要さ。

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2013/04/25

『WIRED VOL.7 GQ JAPAN.2013年4月号増刊」/コンデナスト・ジャパン

WIRED VOL.7 GQ JAPAN.2013年4月号増刊
WIRED VOL.7 GQ JAPAN.2013年4月号増刊
コンデナスト・ジャパン  2013-03-11
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「未来の会社」目当てで買ったけど、「Googleの挑戦」と「Facebookの進化」という、二大検索についての記事が大変面白かった。Google以前を知っている僕は、「検索と言って、これ以上何が必要なのか」と考えるけれど、Google以後の、Google既存の世界から見ると、今の検索はまったくまだ「検索」ではないのだ。「僕が好きなものを好きな人」を、どうすれば検索できるだろうか?
個人的な感覚では、「検索」は「思い出し」のプロセスと重複し始めている。何かを思い出そうとするとき、思い出そうとするよりも先に検索しているようなケースがある。実際に検索していなくても、検索しようとまず頭が考えていることがある。これはよくないことだと常々思っているけれど、Google既存の世界では大した問題ではないのだろうか?いや、そんなことはないはずだ。Googleによる検索のほうが遅いケースが多いから。

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2012/04/22

『絵で見てわかるOS/ストレージ/ネットワーク』/小田圭二

479811703X 絵で見てわかるOS/ストレージ/ネットワーク データベースはこう使っている (DB Magazine SELECTION)
小田 圭二
翔泳社  2008-04-22

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『日本は悪くない-悪いのはアメリカだ』/下村治

4167753669 日本は悪くない―悪いのはアメリカだ (文春文庫)
下村 治
文藝春秋  2009-01-09

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 未だにレーガンを信奉する日本人がいるのにちょっと驚いて、どこかのサテンで手に取った新聞の経済記事に偶然下村治氏と本著が紹介されていたのがあって、丁寧に読んだ。本著は1987年の著作だが、未来予測が含まれる経済書は、後から振り返ってみるとなんともバカバカしい気分になることが多いが、本著はわずかに「1ドルが百円にでもなったときであろう」という部分が外しているくらいで、驚くほど現在でも通用する内容だった。

 「借金帳消し」というやり方が出てきた「日本がアメリカに貸したカネは取り戻せない」という章が特に面白かった。ユーロ危機は負債の始末のつけ方だけど、日本人としての僕は、「ゼロ・サム理論」というか、「借りた金は返さなければ規律が保たれない」とか、そういう倫理的な価値観だけでこの問題を考えすぎているのではないかと思った。経済がなぜ行き詰るのか、その理由のひとつに、消費の膨張を止められないということがある。経済は常に成長を続けなければ必ず衰退してしまうものなのか、これがいちばん難しい命題なのだけど、行き詰った経済を立て直すのに、どういう方法があるのかという考え方の幅を広げてくれた。

 石油ショック後の経済成長の記述は、言わずもがなだけどどうしても東日本大震災を重ねてしまう。東日本大震災後、僕の目には、より自然災害に強い国になるための技術開発と、原子力発電の問題に端を発するより少ないリソースでの生き方の模索と、経済論理ではない人生の価値観の探求という、3つの新しい、身の入った動きがあるように映ってる。これらはいずれも、経済成長を最重要項目に置いた社会では取り上げようのなかった動きだと思う。自然というものは、人間にとって思い通りにならないものであるが故に思ってもみない災害を招くという事実に少しでも意義づけができるとしたら、こういうことなのかなと思った。

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2012/01/31

『経営の教科書-社長が押さえておくべき30の基礎科目』/新将命

4478002258 経営の教科書―社長が押さえておくべき30の基礎科目
新 将命
ダイヤモンド社  2009-12-11

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 私は社長ではないけれど、経営者が身に付けるべき観点を知りたいと思い書店に向かったら、本著と、小宮一慶氏の『社長の教科書』が並んでいた。手に取って内容を少し読んでみたところ、『社長の教科書』は箇条書き的にフレーズとその解説文が並び読みやすそうだったのだけど、『経営の教科書』の文章の力に引き寄せられてこちらを選んだ。本著のいちばんの魅力は外連味の無さだと思う。現実性・納得性と普遍性の両立を心がけたと後書にあるが、その通りに伝わってくる。

 誰もが誰も、経営者的になる必要はないと思う。経営者と社員の役割分担はある。だからこそ私は経営者が身に付けるべき観点を知りたいと思った。書かれていることは8割が当たり前のことだけれども、その当たり前のことを得心させてくれる素晴らしい書物だと思う。

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2011/12/31

『いま、働くということ』/橘木俊詔

4623061094 いま、働くということ
橘木 俊詔
ミネルヴァ書房  2011-09-01


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 先日、『日本人はどのように仕事をしてきたか』を読んだのですが、あちらが日本人の仕事の歴史を、戦中あたりから、主に経営における人事管理の視線を中心にまとまっていたのに対して、本著は正に「いま」、現代の仕事の捉え方・意義・価値観といったものを、古今東西の哲学、あるいは仕事に対置させうる「余暇」や「無職」の分析によってより深く理解する本です。この2冊を併せて読んだのはちょうど良かったと思います。どちらも非常に簡明な文章で、仕事を考えるための基礎知識を纏めて把握するのに役立ちます。

 印象に残ったこと、考える課題となったことを3点:

  • 「仏教的労働観」の「知識」の説明に感動。「知識」は「情報」ではないのだ。ソーシャルとかコラボレーションとかコワークとかなんだかんだいろいろな新しくて手垢のついていない呼び名で、その自分たちの活動の理想性を表して、他の何かと線を引こうと躍起になっている様をしょっちゅう目にするけれど、僕は今後、「知識」という言葉を自分の行動に活用していこうと思う。
  • 日本人はどのように仕事をしてきたか』でも学んだことで、「勤労」の価値観というのは、その時代の経済のカタチ(日本で言えば高度経済成長)に最も効果のある価値観だから、是とされただけで、普遍的根源的な価値がある訳ではない。資本主義の発展のために、キリスト教が有効に作用した歴史を認識する。同じように、今の日本では「やりたいことをやる」のがいちばんという価値観が広がりつつあるが、この価値観はどんな経済のカタチにとって都合がいいから広がっているのかを考えてみる。
  • 僕がフェミニズムをどうにも好きになれないのは、それが問題の原因を常に「外部」に求めるスタンスだからだ。

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2011/12/24

『日本人はどのように仕事をしてきたか』/海老原嗣生・荻野進介

412150402X 日本人はどのように仕事をしてきたか (中公新書ラクレ)
海老原 嗣生/荻野 進介
中央公論新社  2011-11-09


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 1月の3連休に、”「自分の仕事」を考える3日間”に参加して以来、「仕事」「働く」ということが常に頭の中にあった1年。その1年の締めくくりに、”日本における「仕事」の歴史”を学んでおこうと思い、本著を手に取りました。

 僕はこと仕事に関する話に限らず、「今、アメリカで起きているのは…」「今、ヨーロッパで主流なのは…」という言説がとても嫌いで、また、「これは日本人特有の…」「これが日本独特の…」という言説も常に疑ってかかる。前者は、もちろん同時代で先進的な国の同行は常に学ばなければならないものの、この言葉が述べられるときのスタンスが多くが盲目的で安易であることと、先行者を追いかけるというやり方はいつまで経っても自らが先行者にはなれないことを認めてしまってるから。後者は、本当に日本独自のことなのかどうなのかという客観的な見極めがないのもあるし、「なぜ、それは日本では成り立つのに、諸外国では成り立たないのか?」ということを考えもしないから。

 本著は戦中~戦後から2000年までの約70年の、日本人の仕事の仕方を、雇用・労働・企業人事の観点で整理しています。構成は、「働き方」「企業のマネジメント」に大きな影響を与えた13冊を紹介し、その著者との往復書簡形式になっています。2010年の今、その著作の内容を振り返っている書簡もあり、単なる「言いっぱなし」ではないおもしろさがあります。例えば『新しい労働社会』の濱口桂一郎氏と、「ワーキング・プア問題」における非正規社員の捉え方と解決策について、2009年に著した内容を照らしながら意見交換されています。

 自分の理解のために大雑把にKWを整理すると:

■戦中…差別的・大格差の社内階級が存在(この時点で、「家族的経営」が日本の風土から来るものという通説が覆る) 
■戦後動乱期…労使協調→「終身雇用・年功序列」
■高度経済成長期…職務給への対抗→能力主義の誕生・職能制度
■第一次オイルショック後(80年代)…職能の熟練・人本主義
 ・ブルーカラー中心の産業構造=猛烈な経営効率化・生産拡大が国際競争力に繋がる時代
 p97「日本の人件費は先進国の中では圧倒的に安い部類」「もっと人件費の安い途上国といえば、こちらはまだ教育水準・技術力が低いため競争相手にはならず、さらに、社会主義国は冷戦最中で、こちらも国際競争には参加してこられない。」「日本が、まだまだ国際的に優位に立てて当たり前」
■プラザ合意後(85年~)…無策だった時期
■1990年代前半…p152「95年には、50代前半の会社員の年収が20代前半の若年社員の2・88倍」また弥縫策しか手を打たない時代
 ・終身雇用・年功賃金は高度経済成長期に最適なシステムであっただけ
 ・集団的・暗黙的な技術・知識より、個人単位の創造的能力
■1990年代後半…下方硬直では経営ができない時代/職能←→コンピテンシー
 ・就職氷河期
 ・1971年ハーバード大学マクレランド教授「コンピテンシー」
■2000年以降…「人で給与が決まる」をより透明で客観的に/非対人折衝業務の極端な現象(製造・建設・農業・自営業) 定年破壊、雇用改革

 本筋から離れたところで、興味を掻き立てられたポイントが2つ:

p110「世の中の声を聞き、現場の生の資料を集め、公的データと見比べているときに、もう「話の筋」が見えてくるものなのだ」

 この後、「筋が見えない人は、高等数学を使って「答え」をなんとか作り出す」と続く。この、「筋」と「高等(数学)」の部分、来年いよいよメインストリームに現れるだろう「ビッグデータ」への懸念に近い。今のところは、解析したい「筋」を持つ人によって、ビッグデータ処理が使われているものの、明確な「筋」を持たずに「なんとなく凄い」ということでビッグデータ処理を手にする人たちが増えだしたとき、かつてのDWHのときのような大混乱が起きるのではないか。そして本当に問題なのは、売る側としては「なんとなくすごい」もののほうが、売れてしまうことである。

p191「西洋人は「情報処理機構としての組織」という組織間を信じて疑わないそうですから。組織で行われるのはもっぱら情報処理にとどまり、知識の創造という考え方がないのです。その伝でいけば、個人はいつでも取り換えの利く、機械の部品に過ぎない」

 革新的で創造的なITは、多くが西洋から今のところやってくる。それは位相の違う問題だととりあえず納得しておいて、ソーシャルメディアの流行に併せて日本世間に増えつつある、情報を交換を増やすことで、某かの成果があがるような、コラボレーションやソーシャルやコワークと言われるものがどの程度のものであるのか、よく考えてみたい。そもそも、特にアメリカでソーシャルメディアが勃興したのには社会的な理由がある。「ネットワーク」という考え方も、心の満足度ということを考えたとき、今のままでいいのか。編集の思想、エクリチュール、そういうこともひっくるめてよく考えてみる必要がある。

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2011/12/18

『レインツリーの国』/有川浩

4101276315 レインツリーの国 (新潮文庫)
有川 浩
新潮社  2009-06-27

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 この物語は、もちろん、聴覚障害者の苦しみと、若い頃の父親の喪失という苦しみについて、読み取る物語ではない。その苦しみの「理解できなさ」を読み取る物語でもない。人にはそれぞれ苦しみがあって、その苦しみは聴覚障害や父親の喪失のような特別・特殊なものでなくともその人にとっては苦しみであり、人には理解されることがないのが苦しみなのだ、と読み解くべき物語。教科書的には。それはわかるんだけど、僕は敢えて「聴覚障害者」の部分を、一般化せずにそのまま読みを深めようと思わされた。
 聾と中途失聴の違いは、第一言語が手話か日本語かという違いになる。そして、中途失聴者は、第一言語は日本語で、自分からの伝達は第一言語で行えるのに、自分が受け取る伝達が第一言語だと困難を伴う。この「言語」の分離は、手話のみとなる聾者よりも困難と言える側面があると思う。
 自分と相手は同じ言語を使っているはずなのに、相手の考えていることが完全には理解できない。これは、中途失聴者だけの苦しみではないかもしれない。もし、「相手の考えていることが完全には理解できない」という状況があったとすれば、それは、中途失聴者の状況と同じ状況に置かれていることになる。「同じ言語を使っているのに、相手の考えていることが完全には理解できない」という状況は、中途失聴者のケースを持ちだすことによって理解しやすくなるが、これは、僕たち誰にでも起こりうること、起こっていることだと思う。そして、その苦しみを誰にもわかってもらえないとぼやきがちになるが、それが中途失聴者に限らない以上、主客を入れ替えれば、僕が第一言語である日本語を使って行っている伝達行為が、相手にとってみれば、僕の考えていることが完全には理解できない、という状況に陥っている可能性だってもちろんある。つまり、「誰にもわかってもらえない」苦しみなんかじゃないのだ。この物語は、同じ言語を用いているのに違う発話になる、つまり、ラングとパロールの物語だったのだ。

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2011/11/29

『スウィート・ヒアアフター』/よしもとばなな

4344020936 スウィート・ヒアアフター
よしもと ばなな
幻冬舎  2011-11-23


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 これは、関西に住んでいる僕のような、東日本大震災で直接的な被害に遭っていない人こそ読むべき物語だと思います。絶対に読むべきです。

 帯に「この小説は今回の大震災をあらゆる場所で経験した人、生きている人死んだ人、全てに向けて書いたものです。」とあって、「そうなんだ」と思って読んで、読み終えて「そうかなあ?」と思って、今これを書き始めて「その通りだ」と思ったのです。

 この物語の中には、大震災は出てきません。そこまで直接的な物語ではなく、帯に「小夜子は鉄の棒がお腹にささり、一度死んで、生き返った。」と書いているほど、オカルティックな物語でもありません。確かに鉄の棒がお腹にささるんだけど、「一度死んだ」はどちらかと言うと、比喩的です。
 でもこの物語は、確かに大震災を経験した人々に向けて書かれているということは、読めば実感できると思います。「とてもとてもわかりにくいとは思いますが」と書かれてますがけしてそんなことはなくて、恋人を喪失し、自身も生死の淵を彷徨い、そこから回復していく様は、変わらぬばなな節であり、大震災を経験した人々への祈りであることもストレートに読み取れると思います。

 でも、僕は読中も読後も、いくつも胸に迫るシーンがあったりしつつも、何か読み足りない気持ちが残りました。うーん…と思ったのですが、あとがきを読んでわかりました。

 もしもこれがなぜかぴったり来て、やっと少しのあいだ息ができたよ、そういう人がひとりでもいたら、私はいいのです。

 この物語の「重さ」は、やはり、あの大震災の被災者の方にきっちりと伝わるのだと思います。あとがきでばなな自身が「どんなに書いても軽く思えて、一時期は、とにかく重さを出すために、被災地にこの足でボランティアに行こうかとさえ思いました。しかし考えれば考えるほど、ここにとどまり、この不安な日々の中で書くべきだ、と思いました。」と書いている通り、被災を真剣に受け止めている人に伝わる「重さ」なんです。そして、その「重さ」を、頭でわかっても心には感じ切れなかった僕は、やはり、大震災を自分のこととして捉えていないのだと思います。
 だからこそ、東日本大震災で直接的な被害にあっていない、西日本の人々に読んでほしい、如何に自分が東日本大震災を自分のこととして捉えていないかがきっとわかるから。だから、冒頭で引用したように、「この小説は今回の大震災をあらゆる場所で経験した人、生きている人死んだ人、全てに向けて書いたもの」という言葉に深く納得したのです。あらゆる場所。

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2011/05/12

『ポータブル文学小史』/エンリーケ・ビラ=マタス

4582834450 ポータブル文学小史
エンリーケ・ビラ=マタス 木村 榮一
平凡社  2011-02-15

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 エンリーケ・ビラ=マタスは、何にも知らなかった。ただ、本屋をうろうろしてたら、現代海外文学コーナーにこの『ポータブル文学小史』があって、「なんだそれ」と思って手に取ったのだ。その、2か月くらい前のときは買わなかったけれど、ずっと気になっていたのでとうとう買ってみた。立ち読みしたときは「文学小史」の「ポータブル」ということか、と思ってたけど、実際は、「ポータブル文学」の「小史」だったのだ。

 『ポータブル文学小史』には、カフカやサリンジャー、デュシャン、ピカビア、ジャック・リゴー、ジョージア・オキーフ、ヴァルター・ベンヤミン等々、数多くの実在した芸術家・文学者が登場する、多くが秘密結社「シャンディ」のメンバーとして、「シャンディ」にとっていちばん大事なことは、「人生を重いものにしてはいけない」。「シャンデイ」のメンバーとして挙げられる数々の芸術家・文学者たちが、既成の概念やルールを破壊し、”新しい”芸術を目指したモダニストの面々であることを考えると、そのシャンディのいちばん大切なことが言わんとしていることはわかる。必要以上に深刻であってはいけない、身軽でなければならない。だから、「ポータブル文学」なのだ。

 このスタンスは、青春手前にパンクを通り抜けてきた僕たちの世代にはよくわかる。世俗の柵から解き放たれること、「責任」という卑怯な面を下げて人々を束縛するだけの常識から解き放たれること。そして人間性を回復する。
 しかし、その「解放」に、野放図なだけの奔放さを求める、人間の勝手な心性を見てとってしまうことも少なくない、”人生を重いものにしてはいけない”それが目指すところを、都合よく利用してしまう人間の性。それならば、「責任」を軽くも重くもなく「責任」として取り扱えるようになることが、本当に束縛から解き放たれることになるのではないか?どうしても、「束縛からの解放」というだけでは、何か新しいものが生み出せるとは思えない、僕には。自分自身の身勝手さ、都合よさ、なぜ身勝手になりたいのかを見つめることなしには。

 秘密結社は、自ずから崩壊に向かって進むしかない宿命を予感させる。シャンディもその例に違わず、裏切者によって秘密が秘密ではなくなる。この崩壊は、”人生を重いものにしてはいけない”という教条そのものが、”人生”に当てはめきれないことを暗示してるみたいでもあるけれど、そもそもその裏切者として登場するアレイスター・クローリーとは何者だろう?と調べてみたら、秘密結社から独立した神秘主義者だった。

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2011/05/03

『編集進化論 editするのは誰か?』/仲俣暁生+編集部

編集進化論 ─editするのは誰か? (Next Creator Book)
編集進化論 ─editするのは誰か? (Next Creator Book) 仲俣暁生

フィルムアート社  2010-09-22
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 4/23に開催されたビブリオバトルmeets奈良県立図書情報館#01で、『自分の仕事』を考える3日間お世話になった(なっている)図書情報館の乾さんが紹介されていた本。乾さんが紹介で仰っていた「日常と非日常」とかそのあたりは今までもよく馴染んできたテーマだし、面白そうなので早速手に取ってみました。

 まずそもそも、編集って何だ?編集とかディレクションとかプロジェクトとかデザインとか、対置されているのかセットなのか関連語なのかよくわからないまま「当たり前でしょ」と使われている文章にしか当たったことがなくて、編集がそもそもなんなのか分からない。それこそ当たり前、「編集」が関わってくるような職業に就いたことがないし。でも、ものの「編集」に書いている本は、これまた当たり前のように「編集」という行為の領域を、凡人の思う「書籍の編集」という、本に関わる領域からどんどんはみ出させ拡大(解釈)させてくる。だったら、「編集」って、何よ!?

 本著の中では、「編集」について、こう定義されてる:

”編集とは、一定の方針に従って素材を整理し、取捨選択し、構成し、書物などにまとめることを指します”

 なるほどね。キモは「一定の方針」。でも僕はITに携わっていて、「情報」の取り扱い方という観点で言えば、僕は「ローデータ」信者だ。raw data。生データ。ITの世界では、技術の進化(ハードディスクが3TBになったとか、ネットワークが10Gbpsになったとか)によるキャパシティの増大にあわせて、データの集約について揺れたり戻したりが続いている。データを本来のデータのまま保存すればデータ=情報の欠損はないが、莫大なキャパシティを必要とする。だから集約=サマリーして保存する。でもサマリーすると欠損する。そこにキャパシティ増大が起きる。再び、生データのまま全て保存という「無限の夢」が持ち上がる。そしてまたキャパシティを食いつぶす…。
 「編集」というのは、僕たちITの人間の領域で言う、この「サマリー」の部分が近いと思う。「一定の方針」に従って「整理・取捨選択・構成」し、「まとめる」。まさに。DWHなんかも言わば会社中のraw dataを使った経営情報への「編集」だ。

 ここでITの人間として「編集」に対する疑問が立ち上がる。「編集」は、必要か?raw dataさえ渡してくれれば、それで事足りるんじゃないのか?

 例えば新聞。行き着くところまで行っちゃったようなエッジの効いた人なんかは、判で押したように「新聞は読まない。ニュースリソースは違うところから得る」という。そこまで行かない場合、「新聞は日経+2紙読んでる」という。これはたぶん同じようなことを言っていて、つまり、「どんなフィルターかを見抜き、フィルターを外し、raw dataになるべく近づく」ということを。つまり、各新聞の「一定の方針」が邪魔であって、raw dataが欲しい、ということだ。raw dataさえあれば、後の「編集」はこっちでやりますよ、と。

 誰もが自分で編集できる訳ではないから「編集」が必要なんだ、というのは一理ありそうだけど、本著も書くように、「一億総編集者」の時代だと思う。本著がタイトルに掲げるように、「editするのは誰か?」ということになる。ここに来て、「編集者が大袈裟に”編集”と言っているけれど、”編集”ってそんなに概念的なこと?」という疑問が生まれる。
 逆に、raw dataが存在するというのがそもそも幻想だと、どんなデータもすべては誰かのフィルターを通って出てきたデータであってrawであることなどコンピュータの世界ではあっても現実の世界ではあり得ないんだよ、それは確かにそうだと思う、でももしそれを認めるなら現実の世界のすべてのデータは”編集”されていることになり、”編集”は普遍的なことになる、だったら作業としての”編集”を取りたてて”編集”として特別扱いする理由は?その”編集”をした”編集者”の力量で、区別される?

 新聞の例え、いやそれは”情報”にだけあてはまるのであって、世の中には”情報”ではない編集対象の素材もあるよ、そう言われるのはわかる。確かに、イメージとしては”編集”の本質はそこにありそうな気がする。”情報”と”データ”をイコールで結んだのは乱暴だったけれど、自分の中で整理したかったのは”加工前”と”加工後”の違い。僕たちは常に、「真実を知りたければ現場でその目で見ろ、その耳で聞け」と言われる。つまり、加工された”情報”は役に立たない、ということだ。raw dataを自分で見て、自分で”編集”しろ、と言われる。この意味で、僕たちは皆、一個の”編集者”にならなくてはならない、ということだ。

 そうしてまた一周する。「編集って何だ?」

 もう一つ。日常と非日常の線引きがあったけれど、僕は、日常と非日常の線引きが見える人というのは、日々に感謝の気持ちを失っている人に違いないと思っている。

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2010/09/27

『WEDGE 2010年8月20日号』

特集:『日本の森林「孤独死」寸前」

p27「問題は荒れた人工林」「人工林の手入れ不足」
p27「戦前や戦後すぐのころの写真を丹念に見ると、・・・いわゆる「はげ山」です」
p27「転機は昭和30年代」「国産材の需要は減りました」「人工林が1000万ヘクタール超 約4割」
p28「平準化作用」「蒸発作用」-「洪水緩和機能」「水源涵養機能」
p29「日本人が社長のダミー会社をかませていたら、実態を掴むことは不可能」「中国人が買いに来たことを役所に報告したことが漏れれば、中国人からの報復や嫌がらせがあるかもしれないから怖い」
p29「地租改正時に作図されたポンチ絵程度の「公図」」
p30「林業再生」「多野東部森林組合が進める集約化」
p31「日吉町森林組合」
p31「林野庁予算で約4000億円」「地方自治体を加えれば約1兆円の年間予算」
p32「集約化が難しい理由=原価計算の困難さ」「請負業務」

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2010/07/10

『これからの「正義」の話をしよう-いまを生き延びるための哲学』/マイケル・サンデル

4152091312 これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル Michael J. Sandel 鬼澤 忍
早川書房  2010-05-22

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断片的に語りすぎる。それは世界中どこでも共通の言論の癖なのかも知れないけど、この日本では間違いなくそれが当てはまっていると思う。例えば、本著のp231、「実力主義の社会につきものの独善的な前提、すまり成功は美徳がもたらす栄誉であり、金持ちが金持ちなのは貧乏人よりもそれに値するからだという前提を くつがえす」「職やチャンスを得るのは、それに値する人だけだという信念・・・は社会の 連帯を妨げる・・・成功を自分の手柄と考えるようになると、遅れを取った人びとに責任を感じなくなるからだ」あたりを日本の保守支持層や高齢層あたりが読めば、「だから過去の日本に存在していた、過度の成果主義を抑えた社会に回帰すべきだ」と言い募るに違いない。けれど、本著がここで語っているのはそういう文脈ではない。「道徳的功績」を巡る考察があって初めて理解できる文脈だ。過去に非成果主義的な社会があり、そこに成果主義を持ち込んだ現状で、単に非成果主義的社会の長所と見える側面だけを求めて回帰するだけでは、そこにもまた嫌気がさして逆戻りするだけだ。

本著で語られているように、日本では「正義」という概念は、避けて通ってきていたと思われる。もしくは、「すべてから超越してどこかに存在しているもの」という感覚か、または「天皇が判断するもの」「将軍様が判断するもの」という、ある種の特権が、一般人に下ろしてくる判断という、トップダウンの思想だ。「すべてから超越してどこかに存在しているもの」という感覚は、もしかすると本著で述べられている正義に対する第3の考え方に似ているのかも知れない。ただ違うのは、アメリカでは正義と政治は切り離せないものとして考えられていることだ。日本では仮に正義が第3の考え方的なものだったとしても、それを政治に繋げる発想には縁遠いような気がしてならない。そして、正義や道徳から切り離して、まったくもって「リベラル」な環境下で、”競争していればいいものが生まれる”というあまりに純粋無垢な幼稚な考え方でここまでやってきたのかというのがよくわかる。”それで何の文句がある?”という言説に明快にカウンターを打てないというだけでずるずるここまで来てしまった罪は、いたるところで引き受けられなければいけないと思う。

 

p13「われわれは幸福と経済的繁栄を同一視しがちだが、幸福とは社会的福利の非経済的な面をも含むより幅の広い概念である」
p27「2008年と2009年の壊滅的な損失の原因が圧倒的な経済の力にあるとすれば、それ以前の莫大な利益もそうした力のおかげだと言えるのではないだろうか」
p28「アメリカの一流企業のCEOが平均して年間1330万ドルを手にしている・・・ヨーロッパのCEOは660万ドル、日本のCEOは150万ドル」「こうした格差は、経営者が仕事に向ける努力や能力とは無関係な要因を反映しているのだろうか」
p29「価値あるものの分配にアプローチする三つの観点…幸福、自由、美徳」「これらの理念はそれぞろ、正義について異なる考え方を示している」
p56「オメラスから歩み去る人々」
p71「ある快楽がほかの快楽より質が高いとか、価値があるとか、高貴だとか、いったい誰に言えるだろうか?」
p126「利益という目的がこの取引の主たる要素であり、取引全体を覆い、最終的には取引を支配している」
p129「アンダーソンの議論の中心にあるのは、ものには種類があるという考え方」「金銭で買うべきものではないものがあることの説明がつく」
p134「代理母になるのを選ぶ経済的利点は明らかだが、われわれがこれを自由と呼んでいいのかどうかははっきりしない。「貧しい国々の計算ずくの政策としての-世界規模での商業的な代理出産産業の出現は、女性の体と生殖能力を道具扱いすることによって、代理出産が女性を貶めているという思いをさらに強くさせる」
p136「イマヌエル・カント(1724-1804)」
p144「自由に行動するというのは、…目的そのものを目的そのもののために選択することだ」
p150「他者を助けるという行為の動機と、義務の動機を区別している」
p153

  1. (道徳) 義務 対 傾向性
  2. (自由) 自律 対 他律
  3. (理性) 定言命法 対 仮言命法

p163「定言命法の観点からすれば、母親の気持ちを気遣って嘘をつくのは、母親を理性的な存在として尊重しているのではなく、心の安らぎのための手段として使っていることになる」
p172「合意されあれば何をしてもよいという倫理的価値観と、自律と人間の尊厳を尊重する倫理的価値観の違いを浮き彫りにしている」
…「合意」を閾値にする事件を思い起こすと、その種の裁判のやり方の倫理的背景の底が如何に浅いかが判る
p173「私の弁明はカントのものとは異なるが、彼の哲学の精神に則したもの」
p178「念入りに拵えた言い逃れは、真実を告げるという義務に敬意を払っている。だが真っ赤な嘘は違う。単純な嘘をつけば用が足りるのに、わざわざ誤解は招くが厳密には嘘ではない表現を使う人は、遠回しではあっても、道徳法則に敬意を示しているのだ」
p183「平等をめぐる議論-ジョン・ロールズ」
p191「18世紀のスコットランドの道徳哲学者デイヴィッド・ヒュームが直面したものだ」
p207「人間には努力と勤勉さの対価を得る資格があるという主張は、ほかの理由からも疑わしい」「われわれの貢献度は、少なくともある程度は…自分の功績とは言えないものできまるのである」
p208「道徳的功績を否定する」
p216「ロールズの正義論はアメリカの政治哲学がまだ生み出していない、より平等な社会を実現するための説得力ある主張を提示している」
p226「重要なのは、道徳的功績ではないのだ」
p231「分配の正義のよりどころを道徳的功績に求めないという考え方は、道徳的には魅力的だが、人びとを不安にさせる。この考えが魅力的なのは、それが実力主義の社会につきものの独善的な前提、すまり成功は美徳がもたらす栄誉であり、金持ちが金持ちなのは貧乏人よりもそれに値するからだという前提をくつがえすからだ」「職やチャンスを得るのは、それに値する人だけだという信念は根深い」「このような信念は、よく言っても一長一短、度がすぎれば社会の連帯を妨げる・・・成功を自分の手柄と考えるようになると、遅れを取った人びとに責任を感じなくなるからだ
p237「資金を確保することが入学選考に影響を及ぼすほど優先されるようになれば、大学は道を踏み外し、その存在意義である学術的・公民的善から大きく外れることになるだろう」
p250「あらゆる都市国家は、・・・善の促進という目的に邁進しなければならない」
p255「美徳を身につける第一歩は、実行することだ。それは技能を身につけるのと同じことである」
p257「絶えず道徳的に行動に励むことによって、道徳的に行動する傾向が身につく」
p260「カントからロールズに至るリベラル派の正義論の悩みの種は、目的論的構想と自由が相容れないことだ。リベラル派の正義論では、正義は適正ではなく選択にかかわる。」「人びとにみずからの役割を選ばせることだ」
p280「異議を唱えるのは、善についての考え方から正しさを導き出す正義論に対してである」「カントとロールズは…正しさは善に優先すると主張する」
p284「選択の自由は-公平な条件の下での選択の自由でさえ-正しい社会に適した基盤ではない。」「中立的な正義の原理を見つけようとする試みは、方向を誤っているように私には思える」「道徳にまつわる本質的な問いを避けて人間の権利と義務を定義するのは、つねに可能だとは限らない」
p286「アラスデア・マッキンタイア『美徳なき時代』」
p287「道徳的熟考とは、みずからの意思を実現することではなく、みずからの人生の物語を解釈することだ」「そこには選択が含まれるが、選択とはそうした解釈から生まれるもので、意思が支配する行為ではない」
p291「道徳的責任の3つのカテゴリー:

  1. 自然的義務:普遍的。合意を必要としない。
  2. 自発的義務:個別的。合意を必要とする。
  3. 連帯の義務:個別的。合意を必要としない。

p297「同類を優遇する偏見にすぎないのだろうか?そもそも国境の持つ道徳的意義はなんだろうか?」
p307「人格者であるとは、みずからの(ときにはたがいに対立する)重荷を認識して生きるということなのだ」
p311「われわれを拘束する唯一の道徳的責務をつくったのはわれわれ自身であるという契約論的な考えに対抗するための幅広い例だ」
p312「この自由の構想には欠陥があることを示そうとしている」「もう一つの争点は、正義についてどう考えるかだ」
p313「私の善について考えるには、私のアイデンティティが結び付いたコミュニティの善について考える必要があるとすれば、中立性を求めるのは間違っているかもしれない」
p314「国民の権利と義務をいかに定義するかを決めるにあたり、善良な生活をめぐって対立する考え方を度外視することはできない」「本質的道徳問題に関与しない政治をすれば、市民生活は貧弱になってしまう」
「正義をめぐる論争によって、道徳をめぐる本質的な問いに否応なく巻き込まれるとすれば、その議論をどう進めていくかが問われている。宗教戦争に移行せずに善について公に論じるのは可能だろうか?道徳により深く関与した公的言説はどんなものになるだろうか?そして、それはわれわれが慣れている種類の政治論争とどう違うだろうか?」
p321「ジョン・F・ケネディが支持し、オバマが拒否したリベラルな中立性の理想」
p323「正義と権利の議論を善良な生活の議論から切り離すのは、二つの理由で間違っている。第一に、本質的な道徳的問題を解決せずに正義と権利の問題に答えを出すのは、つねに可能だとはかぎらない。第二に、たとえそれが可能なときでも、望ましくないかもしれない」
p331「同性婚論争の真の争点は選択の自由ではなく、同性婚が名誉とコミュニティの承認に値するかどうか-つまり、結婚という社会制度の目的を果たせるかどうか」
p334「われわれは正義に対する3つの考え方を探ってきた」
p335「公正な社会は、ただ効用を最大化したり選択の自由を保障したりするだけでは、達成できない。公正な社会を達成するためには、善良な生活の意味をわれわれがともに考え、避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはないけない」
p337「アメリカのGNPはいまや年間8000億ドルを超えている。・・・GNPはアメリカのすべてをわれわれに教えるが、アメリカ人であることを誇りに思う理由だけは、教えてくれない」
p340「市場の道徳的限界」
p344「公共の言説の貧困化」

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2010/06/26

『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』/楠木健

4492532706 ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
楠木 建
東洋経済新報社  2010-04-23

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p490「個人のレベルでどんなに精緻にインセンティブ・システムを整えても、戦略を駆動する力は生まれないのです。」
p490「自分の仕事がストーリーの中でどこを担当しており、他の人々の仕事とどのようにかみ合って、成果とどのようにつながっているのか、そうしたストーリー全体についての実感がなければ、人々は戦略の実行にコミットできません。」

このことは、『39歳までに組織のリーダーになる』にも書かれていた。個人レベルでインセンティブ・システムを整えて戦略遂行が成功するのは、守銭奴だけをばっちり揃えた組織だろう。『ザ・タートル』 のような組織でさえ、自分の意思を試そうという人間が現れたというのだから。

自分が日々行っている「業務」に対して、「戦略」の考え方をあてはめるのは難しいことが多い。難しいというより、「業務」は「戦略」レベルではないから。自分の日々の業務というのはつまるところ「提案」だが、「提案先のお客様にどうやって自社の提案を採用してもらうか」を考えるのは、戦略のようで「戦略」レベルでないことが多い。これは自分だけが整理していればいいものではなく、関連するチーム全員がしっかり共有できていないといけないが、コミュニケーションが分断されがちな自社の組織編成ではここがひとつ大きなネックになっている。

戦略を展開する際に、それぞれが「個人商店」的な組織になっていると、ほとんど展開ができない。対象とするお客様の特性が大きく異なり、かつ、戦略で展開したい「商材」がどうすれば成功するかという部分の理解に大きなレベルの違いがある場合、展開される側の人間が求める「メリット」というのは「省力化」、もっと簡単に言えば「簡単に売れるポイント」や「一撃必殺技」を求めるだけに陥る。

---

pⅷ「このところの戦略論の「テンプレート偏重」や「ベストプラクティス偏重」には、むしろストーリーのある戦略づくりを阻害している面があります」
p8「無意味と嘘の間に位置するのが論理」
p13「違いをつくって、つなげる」、…これが戦略の本質
p31「実務家に影響力のあった戦略論に「ブルー・オーシャン戦略」があります」
p45「「プロフェッショナル経営者」という幻想」「経営者の戦略スタッフ化」「テンプレートやベストプラクティスは過度に心地よく響きます」
p46「情報(information)の豊かさは注意(attention)の貧困をもたらす」
p50「戦略ストーリーは、…環境決定的なものではない」
p57「徹底した機能分化は、…協力なリーダーを必要とします」
p58「機能と価値の違い」「機能のお客さんは組織」「価値のお客さんは…組織の外にいる顧客」
p76「ソフトバンクは「時価総額極大化経営」を標榜」
p102「「目標を設定する」という仕事が「戦略を立てる」という仕事とすり替わってしまいがち」
p113「シェフのレシピに注目するのがポジショニング(SP:Strategic Positioning)の戦略論」「厨房の中に注目するのが組織能力(OC:Organizational Capability)に注目した戦略」
p117「実際に画面を横から見て、『きれいに見えてイイね!』と喜んで仕事をしているユーザはいるのでしょうか」
p128「ルーティンとは、あっさりいえば「物事のやり方(ways of doing things)です」「その会社に固有の「やり方」がOCの正体」
p160「我慢して鍛えていれば、(今はそうでなくても)そのうちきっといいことがある」
p173「戦略ストーリーの5C」

  • 競争優位(Competitive Advantage)
  • コンセプト(Concept)
  • 構成要素(Components)
  • クリティカル・コア(Critical Core)
  • 一貫性(Consistency)

p178「要するに「売れるだけ売らない」ということです。」フェラーリの例
p218「ごく粗い脚本で、暫定的なキャスティングで、舞台装置の準備もそこそこに、まずはやってみよう…」
p232「売れない店から売れる店に商品を移すことによる平準化」
p238「コンセプトとは、その製品(サービス)の「本質的な顧客価値の定義」を意味しています」「本当のところ、誰に何を売っているのか」
p264「すべてはコンセプトから始まる」
p268「1980年代に入って、アメリカは価値観の断片化が進んだ結果、過剰なハイテンション社会になりました。」
p274「「誰に嫌われるか」をはっきりさせる、これがコンセプトの構想にとって大切なことの二つ目
p276「大切なことの三つ目、…「コンセプトは人間の本性を捉えるものでなくてはならない」
 『LEON』や『GOETHE』は「人間の本性」を捉えているけれどそれは一部の人間の本性の一部でしかなかった そしてそれは大多数にならなければ魅力の本質を失ってしまうような、自立性の弱い「群れ」のようなものだった
p325「468店に相当する規模のオペレーションを構えるというアグレッシブ極まりない計画」「1999年には1500万ドルを投じて最先端のサプライチェーンのシステムを構築」
p346「「バカな」と「なるほど」」吉原英樹
p363「B社がA社の戦略を模倣しようとすることそれ自体がB社の戦略の有効性を低下させ、結果的にA社とB社の差異が増幅する」
p423「「なぜ」を突き詰める」
p437「「人間のコミュニケーションや社会のありようが革命的に変わる!」という大げさな話をする人が決まって出てくるのですが、私は全くそうは思いません。」(Twitterについて)
p443「営業スタッフがその店の良いところを発見し、それを限られた広告スペースの中で表現して、ターゲットである二十代の女性読者に伝える。」
p446「日本テレビのプロデューサーとして、テレビの創成期を引っ張った人物」井原高忠
p450「一撃で勝負がつくような「飛び道具」や「必殺技」がどこかにあるはずだ、それをなんとか手に入れよう、という発想がそもそも間違っている」
p458「そろそろ成長の限界にさしかかっているのかもしれません」
p464「ごく個人的な活動は別にしても、ビジネスのような高度に組織的な営みの場合、失敗したとしてもそれが失敗だとわからないことのほうがずっと多い」
p482「ビジネススクールの戦略論の講義がしばしばケース・ディスカッションの形をとるのは、それが過去のストーリーの読解として有効な方法だから」
p493「一人ひとりがその念仏を唱え、自分の行動がその行動基準から外れていないかを毎日の中で確認できる。」
p499「小林三郎さんがこう言いました。「それは個人の『欲』です。『夢』という言葉を使わないでください」
p13「平尾」

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2010/06/09

『ヒューマンエラーは裁けるか』/シドニー・デッカー

4130530178 ヒューマンエラーは裁けるか―安全で公正な文化を築くには
芳賀 繁
東京大学出版会  2009-10-29

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 タイトル通り、「裁けるか」に焦点が当たっていて、「防げるか」が第一の論点ではない。「裁判が、ヒューマンエラーの再発の防止に役立つか?」という議論は展開される。そして、多くの場合、役に立たない方向に進むことが明快に記される。体裁が論文であり、最後段のまとめに実践方法があるものの、ツールが提供される類の書物ではない。自分の「ヒューマンエラー」に対する認識と思考を強化するために読む書物。

※処罰感情

piii「ヒューマンエラーの古い視点は、…インシデントの原因と考える。・・・新しい、システム的な視点は、・・・原因ではなく、症状と考える」
p26「マックス・ウェーバーが・・・警告したように、過度な合理主義は、対極の効果をもたらす・・・。合理的な制度はしばしば不合理な結果をもたらす。それは極めて自然にかつ必然的に生じる。」
p36「あるいは、様々な観点や利害、義務、そして代替案を考慮に入れて問題の評価を行うことが「公正」なのか?」
p45「モラール」「組織コミットメント」「仕事満足感」「役割外のちょっとした余分な仕事をする意欲」
p67「私たちの社会は、裁判に持ち込まれる事例を増やせば増やすほど、お互いの意見を気兼ねなく伝え合うのがますます難しくなる風土を作りだす」
p83「情報開示と報告の違い」「報告とは、上司、管理組織あるいはその他の関係機関への情報提供」「情報開示とは、顧客・患者・家族への情報の提供」
p114「後知恵バイアス」
p124「後知恵と有責性」
p132「普通の基準」とは何か?
p157「司法が関与することによって、より公正になることもあれば、より安全になることもない。」
p170「「偶然の事故」や「ヒューマンエラー」といった用語を排除する方法。法律にはそのような概念がないからやむを得ない」
p171「インシデントを裁判にかけると、人々はインシデントを報告しなくなる」
p184「誰かを投獄しても彼らが失ったものが戻ってくることはない。」
p188「取り調べてから数カ月も後に作成された…被疑者が言いたかったこと、裁判官もしくは陪審員が記録から読み取ったものとの隔たりは極めて大きくなる」
p202「組織や社会において、許容できる行動と許容できない行動との間の線引を誰がするのか?」
p225「某氏が責任を取って、辞職した」
p236「調停の席で話されたことは法的に秘密扱いにされる。」

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2010/05/15

『モバイル・コンピューティング』/小林雅一

4569775691 モバイル・コンピューティング
PHP研究所  2010-02-06

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 「モバイルったって、パソコンが小さくなるだけだろう?」程度の認識しかなかったところを、インターフェースの変化・進化をたどって根本的なところを理解させてくれた良書。モバイル・プラットフォームで始まっている主導権争いの構図は概ねこれまでのIT業界で起きてきた主導権争いの構図で理解できるけど、「モバイル・コンピューティング」の本質的なところは、インターフェース抜きでは理解できないところだった。「モバイルだからキーボードをつける余裕がない」程度の話じゃなかったのだ。

 モバイル・コンピューティングは、「モバイル」だから、いつでもどこでも「情報処理」ができる、もしくはそれを実現する、ということ。古くはホストコンピュータの時代は情報処理ができる場所は「ホストコンピュータの設置場所」で、それがパーソナルコンピュータとなって「パーソナルコンピュータのある場所」となり、パーソナルコンピュータがノートブックになって「ノートブックが置ける場所」になった。そして「モバイル」になると、もはや置く場所も問わなくなる。いつでも「持っている」。その代り、どうやってコンピュータに情報処理を「させるのか」というインターフェースの問題が現れる。だから、インターフェースを理解しない訳にはいかなかった。
 実用的な情報処理、例えばアドレス帳管理とか写真管理とかは、処理のバリエーションはそれほど多くなく、従ってそれほど多様なサービス提供者も求められないと思う。写真管理で言うとPicasaかFlickrとあと1種類くらいが世界で提供されてば十分。それは裏を返すと、この分野での仕事に従事できる人間がそれだけ少なくて済むということで、それだけ仕事がなくなることを意味する。これまでは、ローカルマシンで処理するが故に、ローカルマシンで動作するアプリケーションを選択することになり、それだけ開発の仕事があった。iPhoneとAndroidというプラットフォーム/マーケットが新たに現れたけど、本質的にはアプリケーションの規模と寿命はどんどん短くなると思う。小規模な開発体制で開発できる環境ということは、1つのアプリケーションはそれだけ短期間しか収益を上げられないということだ。矢継ぎ早にアプリケーションを提供し続けない限り、その開発団体は事業継続できなくなる。でも、ゲーム以外にそんなにバリエーションのあるアプリケーションカテゴリがあるか?ゲームですら、出尽くした感があるというのに。
 この「仕事が無くなる」漠然とした問いへの解の道は、第6章「キンドルと出版産業の未来」にかすかに提示されているように思う。

 モバイルはワイヤレスだ。当たり前だけど常に意識しないといけないことだ。この先、必要であり重要なのはワイヤレス。改めて言うとバカみたいだけど、意外と当たり前でないのだ。

 

p9「HTC DreamのCPUの処理速度は初代クレイの6.5倍、メモリーの容量は実に48倍」
p12「携帯電話端末の売上は2008年に3589万台と、前年よりも29.3%減少、また2009年上期には前年同期比で14%も減少」
p20「2種類のモバイル端末向けチップ ムーアズタウン メッドフィールド」
p46「ABC(Activity Based Computing)」
p70「1984年」
p71「キャリアを中心とするモバイル産業の構図は、少なくとも、つい最近まで、日本と米国とで驚くほど似通っていた」
p78「2007年7月31日に採択された」「無線インフラのオープン・アクセス規制」「700MHz帯の電波」
p82「契約利用者を獲得するには、一人当たり50~100ポンド(7500~15000円)もかかる。
p100「コンピュータがユーザの置かれた状況(コンテクスト)を感知し、そこで必要な仕事を自動的にこなしてくれる。」
p127「AR」
p131「ビジュアル・マーカーARに向けて、ARToolKit」「奈良先端科学技術大学院大学の加藤博一教授が開発」
p139「恐らくモバイル・コンピューティングに適しているのは、」「音声を中心とするコマンドだろう」「アンディ・ルービン氏が自ら開発した携帯OSにアンドロイドという名称をつけたのは、モバイル・コンピューティングの未来に対する、そのようなビジョンに基づいていたのだろう」
p147「結局、これまでのアクセル要因が、全部逆転する」「新機能を搭載するのはもう止めて、むしろ昨日の利用率を高める方向に舵を切るべきだ」
p162「キャリアにとってアイフォーン・ビジネスは非常に利益率が高い」
p163「マイクロペイメントの仕組みをもっていること」
p173「NFC Near Field Communication」「RFID(電波による個体識別技術)
p182「いちいちダウンロードするよりは、ウエブ上の共通アプリを使用した方が効率的で処理も早くなる」
p183「モバイル・サービスは遅かれ早かれ、必ずクラウド・コンピューティングに向かう」
p209「2009年前期における電子ブックの売上は前年同期比で136.2%増の1400万ドルを記録」
p225「ひたすら情報機器の高性能化や多機能化に向かって突っ走るよりも、ペンやインクのように我々の生活に馴染んだ使い易さを優先する、という姿勢」
p232「たとえば教育があまり行き届いていない地域でも、ワイヤレス・インフラは存在する」

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2010/03/08

『雲の世界の向こうをつかむ クラウドの技術』

4048680641 雲の世界の向こうをつかむ クラウドの技術
アスキー・メディアワークス  2009-11-05

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  • 直接的には下記3章が有用。
  1. クラウドの技術的特長
  2. 変わりゆくデータセンターの役割とカタチ
  3. クラウドの可能性と課題
  • p9 「CAP定理」consistency,availability,partitionの2つしか同時に満たせない
  • p10 eventual consistency = ある期間のあとにはコンシステンシな状態に戻る
  • p11 「クラウドシステムでは、…クラウドシステムのOS自身が、フェイルオーバーの能力を持つ」
  • 「エンタープライズの基幹業務にはクラウドは向かない」…「スケーラブルでアベイラブルで、かつイベンチュアルコンシステントなシステムは可能である」
  • ”イベンチュアルコンシステント”とは、パフォーマンスに帰結しないか?
  • p11「BASE」basically available, soft state, eventually consistent
  • p13「2ギガのメモリのPCが1000台集まればメモリ容量は2テラバイト」

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2010/01/10

『設計事務所のためのマーケティングマニュアル』/建築資料研究社

4863580290 設計事務所のためのマーケティングマニュアル
建築資料研究社  2009-09

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 お客様に大手設計事務所様を持つので、自分の中で長年燻っていた「マーケティングの実際とは」という興味と、お客様業界の実際を知るという興味がクロスしてこの本を手に取った。内容的には設計事務所専門に偏った内容ではなく、一般的なマーケティング方法的なところも多くて読みやすいし参考になる。

 ハウスメーカーや工務店、ゼネコンが建築士を雇用して業務をパターン化し設計事務所の業務を圧迫している、というくだりは、設計事務所の置かれている状況を理解できるとともに、様々な業界で起きている「他業種との競争」「業界の垣根がなくなる」という現状を実感できる。
 自分の業務との絡みでは、「模型・パースは必ず作る」がいちばん。提案は初回から行えないといけない。「ヒアリング」というステップ1枚かませることで、他社より一歩遅れるかもしれない。十分なヒアリングなしに使いまわしの提案をするのはいけないが、出遅れても取り返しがつかなくなる。一方で、我々の業界では、中小規模案件に対して手厚いケア・十全なカスタマイズを実施することの非採算性がさけばれて久しい。このあたりは、個々人の範囲と会社の範囲を分けて考える必要がある。

p18「いわゆる「良質なお客様」と付き合いたいのであれば、それ相当の「企業家」は必須になるはずです」
p24「ライフサイクルに則った経営をしていないと業績を上げていくのは極めて困難」
p26「彼らにとって重要なことは建物を建てることであって、設計業務を請け負うことではありません」
p28「クライアントが聞きたいのは一般的な設計の知識ではなく、その設計のあり方を自社にあてはめたらどうなるの?という、あくまでも自分ゴトなのです」
p40「「行動力」。しかも「即時行動力」」
p44「成功の三条件 ①勉強好き②素直になる③プラス発想をする
p48「情報は自分で探す時代になった」
・・・言葉にする力を
p67「逆に小さな事務所でも何名も抱えている「格」のある事務所にも見えます」
p70「所詮真似ですから実際に経験したノウハウとは深さが違います」
p89「「落としどころを明確にするための三つのステップ」①このセミナーで伝えたいことを一文で表現すると?②そのためにわたしたちがお手伝いできる商品は何?(バックエンド商品)③第一歩としてお客様は何をしたらいいの?(フロントエンド商品)
p126「注意をしてもらいたいのが、「電話口での相談には答えない」」
・・・電話口しかない場合は?
p132「なんでこの時期の受注が多いのだろう?」「伸びる時期により伸ばす」
p136「紹介が発生する出あろう相手を選ぶ」→「先にこちらから紹介案件を提供する」
p142「経営計画を作る」
p154「プロセスの「見える化」
p158「あなたが書いて発信するからこそ、情報の価値が出る」
p162「模型・パースは必ず作る」
・1回目から作る
・1回目から作れるようにするためにはどうすればよいか?を考える

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2009/10/18

『集中講義!日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか』/仲正昌樹

4140910720 集中講義!日本の現代思想―ポストモダンとは何だったのか (NHKブックス)
日本放送出版協会  2006-11

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 放っておけば偏ってしまうから意図的に近寄ることを堪えているもの、ひとつが近代文学でもうひとつが思想・哲学系。なんも考えなかったら延々この二つのジャンルばかり読んでしまう。なのでなるべく避けてたんだけど、最近、どうしても抑えが利かなくなってて数冊読んでおり、今回手に取ったのがこれ。構造主義、ポスト構造主義をちゃんと整理したくなったのと、日本の現代思想について、現代に至る少し手前、安保あたりから整理したくなったのがきっかけ。

 大枠で印象に残ったのは3点。ひとつは「無限」をどう扱うか、という手法の問題。ひとつは「過去の自分をどう否定あるいは清算するべきなのか?」という問題。もうひとつは、やはり現代は「歴史」を求めてるのではないか?という問題。

 最初の”「無限」をどう扱うか?”は、構造主義の「メタ構造」、つまり「ポスト構造主義」の発端についての理解。ポスト構造主義に触れたときの印象はいつも「バラバラになっていく」という感覚で、「私はあなたと違う」式のモノの言い方をする人に対して「ああそうですか。で?」と言ってしまう心情を強化する感覚。なぜ差異が欲しくなるのか、差異があるからなんだっていうのか、別に思想や哲学に触れていなくても、自分の本性に誠実であろうとすれば見えてくるものがある。そこに誠実であろうとしない人に対して、ポスト構造主義の考え方を当てはめてみたくなってしまう。

 次の「過去の自分をどう否定あるいは清算するべきなのか?」は、文字通り転向や転回の問題。日本は特に、戦後の転向を簡単に許した歴史に始まり、あっけなく昨日までの思想・信条を捨ててしまうことに否定的でない。立場が変われば、もっと言えば気が変われば、簡単に思想・信条を変えて構わない。その時々の状況の責任にすることができる。逆に言えば、その時々の自分は「何も考えていなかった」と言える、ということ。ここでも、「わたしはあなたとは違う」式のものを言う人に何か一言言いたくなる。「自分のことを自分のこととしてだけ、表現することはできないのですか?」と。自分のことを表すために誰かを引き合いにだして誰かを貶めて、挙句に後になって「あれは本位じゃない」では引き合いに出されたほうはたまったもんじゃない。僕のものの考え方はこの「胡散臭さ」を突き止め、自分はそれを乗り越えるところが出発点だ。 

 本著を読んで、改めて読みたいと思った書籍:

パサージュ論 (岩波現代文庫) パサージュ論 (岩波現代文庫)

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表徴の帝国 (ちくま学芸文庫) 表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)
Roland Barthes

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2009/07/22

『この1冊ですべてわかる ITコンサルティングの基本』/克元 亮

4534045336 この1冊ですべてわかる ITコンサルティングの基本
克元亮
日本実業出版社  2009-03-26

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p108 ビジネスモデリング

  1. ユースケース図 … UML(ISO標準化された仕様記述方法) サブジェクト・アクター・ユースケース・関連
  2. BPMN(Business Process Modeling Notation)
  3. DMM(Diamond Mandara Matrix)
  4. ERD(Entity-Relationship Diagram)
  5. DFD(Data Flow Diagram) … 機能・外部環境・データ・情報

p114 APQCのPCF → DFD
p108 ①経営者 ②業務担当者 ③SE と話をする

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2009/07/05

『一下級将校の見た帝国陸軍』/山本七平

4167306050 一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)
山本 七平
文藝春秋  1987-08

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現在、無闇に好戦的なのは一体何歳くらいの人間か。終戦を学徒で終えたとするなら、現在70歳~80歳くらいか。戦争の記憶があって、戦争に加われなかった世代だ。
この本の初版が1976年であることにも注意したい。

p16「学生に何とか執行委員長とかいった肩書がつくと一瞬にして教授への態度がかわる。ついで就職ともなれば、一瞬にしてまた変わる。社員になればまた一瞬にして変わる。」
p17「事大主義すなわち”大に事える主義”です。」
p27「以後何かあるたびに、「これは結局、二個大隊といわず、”連隊ただし一個大隊欠”と言いたがる精神構造」
p30「在学中に「現地教育」の名で戦地に送られている。最も不幸だったのはこの人たちで、その大部分は海没」
p44「そういう際に出てくるのが精神力」「強調に変わった」「なるほど、アッツはこうだったのか」
p46「下級指揮官を射殺して士気の末端を混乱させるのは確かに有効な方法」
p49「いわばナチ・モードで、そのムードに自ら酔っていたわけだが、ナチズムへの知識は、ナチの宣伝用演出写真とそれへの解説以上には出ず、またドイツ国防軍の総兵力・編成・装備・戦略・戦術に関する専門的具体的知識はもっていなかった」
p89「イタリア男の甘言に弱い日本娘」
p93「戦闘の体験はあっても、戦争の体験がなく、戦争の実体を何も知らなかった。そのくせ、何もかも知っていると思い込んでいた、ということであろう」
p94「「成規類聚」の権威東条首相にできることではなかったし、また形を変えた似た状況の場合、いまの政治家にできるかと問われれば、できないと思うと答えざるをえない。」
p97「そこを一時間で通過して、何やら説明を聞いて、何が戦跡ですか。」
p105「「現地で支給する」「現地で調達せよ」の空手形を濫発しておきながら、現地ではその殆ど全部が不渡り」
p110「「思考停止」、結局これが、はじめから終わりまで、帝国陸軍の下級幹部と兵の、常に変わらぬ最後の結論」
p113「それはむしろ発令者の心理的展開のはずであり、ある瞬間に急に、別の基準が出てくるにすぎない。」
p114「方向が右であれ左であれ、その覚悟ができているなら」
p130「狂うとは何であろうか」「それは自己の「見方」の絶対化・神聖化」「見方の違う者は排除し、自分の見方に同調する者としか口をきかなくなる」
p136「盗みさえ公然なのだから、それ以外のあらゆる不正は許される」
p145「それは、今、目の前にある小さな「仲間うちの摩擦」を避けることを最優先する、という精神状態であろう」
p149「そのことと、それが員数主義という形式主義に転化していくこととは、別のことであり、この主義の背後にあるものは、結局、入営したときに感じたこと」
p150「いまに日本は、国民の全部が社会保障をうけられますよ。ただそれが名目的に充実すればするだけインフレで内実がなくなりますからね。きっと全員が員数保障をうけながら、だれ一人実際は保障されていない、という状態になりますよ、きっと。」  
p157「現在では、この私物命令の発令者が、大本営派遣参謀辻政信中佐であったことが明らかである。」『戦争犯罪』(大谷敬二郎著)
p171「それは戦後日本の経済の二重構造の原型のような姿」
p202「フランクルの『愛と死』」
p209「「歴戦の臆病者」の世代は、いずれはこの世を去っていく。そして問題はその後の「戦争を”劇画的にしか知らない勇者”の暴走」にあり、その予兆は、平和を叫ぶ言葉の背後に、すでに現れているように思われる。
p242「案外、沈まないで持ちなおすんじゃないかといったような気がして」
p277「環境が変わると一瞬にして過去が消え、いまの自分の周囲に、」
p284「自暴自棄のバンザイ突撃に最後まで反対」「冷徹な専守持久作戦で米軍に出血を強い続けた沖縄軍の八原高級参謀」
p287「日本の将官、指導者に欠けていたのは何なのか、一言でいえば自己評価の能力と独創性・創造性の欠如」「事実認識の能力」
p294「自分たちで組織をつくり、秩序を立ててその中に住む」
p299「最終的には人脈的結合と暴力」
→人脈的結合は欧米のほうが強い傾向では?
p301「そしてこの嘆きを裏返したような、私的制裁を「しごき」ないしは「秩序維持の必要悪」として肯定する者が帝国陸軍にいたことは否定できない」
p303「陸海を問わず全日本軍の最も大きな特徴、そして人が余り指摘していない特徴は、「言葉を奪った」こと」
p397「統帥権の独立」
p310「帝国陸軍が必死になって占領しようとしている国は実は日本国であった」
p313「明治人は明確な「戦費」という意識があった」
p314「戦費支出の戦争責任」
p316「戦時利得者は大小無数の”小佐野賢治型”人物であり」
p319「上官が下級者に心理的に依存して決定権を委ねれば」
p322「「モチ米ヤミ取引」で丸紅が法廷に立たされる」
p326「「ロッキード事件における丸紅」を見て、その組織内の原則は結局同じ」
p333「帝国陸軍は、「陛下のために死ぬ」こと、すなわち「生きながら自らを死者と規定する」ことにより、上記の「死者の特権」を手に入れ、それによって生者を絶対的に支配し得た集団であった」
p334「それは「死の哲学」であり、帝国陸軍とは、生きながら「みづくかばね、くさむすかばね」となって生者を支配する世界」
p340「アーネスト・ゴードン」

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2009/06/07

『良い広告とは何か』/百瀬伸夫

4904336283 良い広告とは何か
百瀬伸夫
ファーストプレス  2009-04-11

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 「マーケティング」と「広告」が、表裏一体で語られている。「広告」がなければ「マーケティング」ではない、という思想と言っていいと思う。いかに広告宣伝費を削減するか、更に進めていかに広告宣伝しないか、というセールス活動に触れてきたので、違和感を感じるけれど、納得できる。「マーケティング」とは売れる製品開発のための「市場分析」であって、広告やCMやセミナーでの露出を捻り回すことではない、という感覚でいたが、「良い広告とは何か」という問いに対し、「広告主の業績向上に繋がる広告だ」という定義で応える本書の思想は、根底で共感できる。

 全般を通じて最も感じたのは、自社がいかに「上っ面」でしか、ビジネスをしていないか、ということ。様々な手法や戦略や言葉が社内外を通じて踊るが、すべて、どこかの会社の「成功事例」と言われるものを安易に借りてきただけだ。それに対して、適当に統計値を出して有効であった、と結論付ける。「成功事例」から学ぶべきはその本質であって、やり方ではない。これは、「ベスト・プラクティス」を謳って横展開で楽に稼ぐことを旨とするIT業界全体の体質なのかも知れない。

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2009/05/31

『顧客はサービスを買っている』/北城恪太郎  諏訪良武

4478006679 顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント
北城 恪太郎
ダイヤモンド社  2009-01-17

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 北城恪太郎氏監修ということで期待して読んだが、概ね既知の内容だった。

  • サービスサイエンスの視点。モデル化。
  • ”事前期待”の可視化・顕在化と、マネジメント
  • マネジメントとは、「管理」ではない。

 このタイプの本を読むと、直に「自分はどう行動すればよいか?」という視点になる。そして、会社全体のことを考え、会社全体を改善するためにまず自分が働きかけられる部分はどこか、という発想になる。この思索には「マネジメント層」「フィールド」という2つの役割しかない。しかし、膨大なフィールド情報を読み込めるだけのスキルやシステムを持っているマネジメント層は稀で、フィルタリングするための役割が必要なはずである。それがない企業に勤めている間は、「自分はどう行動すればよいか?」と自分のフィールドの役割にあった行動を考えるのは無駄で、一足飛びに「マネジメント層」視点でモノを言うほうがよいのではないかと思う。

 オムロンフィールドエンジニアリング社の情報システムやコールセンター見学の話が、「サービスの見える化」として紹介されている。こういうのを見聞きして、自社のコールセンター見学ツアーなどを企画しているのだなあ、と初めて謎が解けた思いだった。もう何年も前から、「いくらシステムが素晴らしくても、それがお客様に価値を提供できているかどうかは別問題」という問題意識が、少なくとも僕の周りにはあった。それなのに、よく嬉々としてコールセンター見学ツアーなどやるもんだと思っていたが、こういう「古い成功事例」を追いかけていたのだ。オムロンフィールドエンジニアリング社のコールセンター見学が説得力を持ち(今でも)成功するのは、①先駆者であるから②当時はシステム自体が他にないものだったから に尽きると思う。今じゃどこにでもあるような二番煎じのシステムを見せて、感動するようなお客様はいないだろうし、そんなものを見てサービスが素晴らしいと納得されるお客様なら、実際に提供したあとにトラブルが起きるだろう。「納得」が大事なのだ。

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2009/05/04

『広告批評 No.336 2009.4 最終号』

4944079729 広告批評 336号(2009年4月号) (336)
マドラ出版  2009-04

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p014『アートとデザインのあいだ』
p020「話を聞いて掴めたときが一番クリエイティブな瞬間なんですか。」
→”デザイン”という行為のひとつの本質。クライアントとアートディレクターの関係。オーダーメイドの本質。ソリューションはオーダーメイドであり、そうである以上、「ソリューション営業」など成り立たない。「ソリューション営業」は欺瞞、というのは僕の現職でのひとつの信念。
p020「50年後のアートヒストリーが何を求めているかまでを考えて」(村上隆)
p021「アートのコンテクストにおいて現在なすべきことを僕が知っているからなんです」(村上隆)

p054『テレビとインターネットの未来』
p057「ちゃんと計れるから面白いものがきちんと評価されるのかっていうと、一概にそうだとは言えないんですよ」
p067「でも、上岡さんが引退されたのって2000年ですよね?」

p212『広告夫婦がゆく!!』
p213「初めてそういう物件に出会ったのが72年ですね。」(赤瀬川原平/トマソンについて)
p217「僕が作っている、サントリーBOSSの「宇宙人ジョーンズ」シリーズというCMがありまして」
p216「利休のことを勉強したのも、まったくそこからですね。歴史の勉強ってやったことなかったから。」(赤瀬川原平)

p220『ものをつくる、こころ。』
p222「大体気になる人に会うようにできてない?」(杉山恒太郎・電通常務取締役)
p223「そのためには歴史を知らないと絶対ダメ。新しいものは伝統の中からしか生まれないものなんです」(杉山恒太郎・電通常務取締役)

  

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2009/04/19

『35歳から仕事で大切にしたいこと」/村井勉

4860630947 35歳から仕事で大切にしたいこと―これからさき、成長していくために
村井 勉
あさ出版  2005-03

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p7「最近の本はあまりに親切すぎて」
p7「ミドルクラスというのは、己の頑張りだけではどうにもならぬ、と悟ることなのだ」
p30「ミドルクラスになるとどうしても”事なかれ主義”になりやすい」
p49「彼のアイデアが素晴らしいのは自動車学校に目をつけたことだ」
p52「同じ人物をいい面から見てみると必ず別の能力が発見できると思う」
p57「社員のやる気を失わせる要因として「甘え」「見栄」「ずるさ」「臆病」「寄りかかり根性」「知恵なし」…「会社に甘えた上司」「見栄をはる上司」…」
p59「会社の数字はトータルでは黒字だが実際の本業では赤字なんだ」
p93「アメリカは経営者と労働者は契約で結ばれていて、それを安易にかき回すと、組織の統制がとれなくなってぐちゃぐちゃになってしまうから」
p111「ミスの処理がうまい人というのは、オールラウンドな能力をもった人」
p116「「それは絶対に売れるのか?」「感覚だけでものを言ってもだめだ」「それが売れるという根拠は?」「データを示せ」「類似商品の前例はないのか?」これらのセリフはある意味禁句  
p127「ゆとりとけじめが必要」
p130「しかし限度には自分で責任を持つというのが無執」
p144「プロデュース能力というのは表に名前がなかなか出るものではないが、これからの時代ミドルクラスにもっとも必要な能力」
p156「それは値下げを納入業者にお願いすること」
p159「アメリカでは信用機関の仕組みが非常に発達」
p167「「自分が望んだものを手に入れられないことは不幸だ」と決め付けている」
p175「踊り場で学んだことは次のステージに活用しなければ意味がない」

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2009/03/15

『雲の果てに 秘録富士通・IBM訴訟』/伊集院丈

4532314283 雲の果てに―秘録 富士通・IBM訴訟
伊集院 丈
日本経済新聞出版社  2008-12

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 どんなことにも、どんなものにも、歴史があるのだと教えてくれる一冊。

 まず、IT業界にいながら、何もわかっていなかった自分が恥ずかしい。OSは自明のものだと思っていた。違うのだ。OSは最初から存在したものではない。ハードウェアと、ソフトウェアしかない時代があったのだ。互換機ビジネスとスーパーセット戦略はそういう歴史の中から生まれたもので、単純にメインフレームの後続だった訳ではないのだ。そんなことすら知らなかった。そして、その中で知的財産と著作権が最大の焦点になったのだということも知らなかった。知的財産と著作権は、自明のものだと思っていた。最初にそれを作った人間が、それを独占的に使用する権利を持つ。それはソフトウェアについても当然そうだろう、という「感覚」を持って育ってきた。そこには争点があり、歴史がある。そういう認識に欠けたまま、来てしまったのだ。

 IT業界だけではない。今でこそ米国は著作権を当然のように振りかざす存在だが、かつてはコピー天国と言われ欧州に軽蔑されていたのだ。その米国が、歴史の中で、自分たちの権益を守るための方便として、著作権に目をつけ、それを振りかざすようになっていく。そんな、欧州から「幼稚だ」と言われる米国を日本は追い続け、その米国に屈し、果てに「この国は駄目になる」と言われる。そんな米国流の資本の論理が席巻した数年前、買収される側の日本企業の抵抗を、精神論でしかないと切ってすてるような論法が持てはやされたが、果たして米国でも1974年時点では、アムダールという会社は富士通に対して、金と技術の提供は受けるが経営に口出しされたくない、という署名活動を起こしているのだ。おまけに、僕は「日本は器用で技術力の高い国で、日本製品は高品質だ」と子供の頃から思い込んで生きてきたが、1980年代でも日本人は「そもそも日本人が先端技術に手を出すことが間違いだ。日本人にコンピュータを開発する能力なんてないんだ」などと言われるような存在だったのだ。

 すべて目から鱗だった。簡潔に纏めてしまえば、声のでかいものが勝つ、ということと、先を走ったものが勝つ、という、単純な結論しか出てこない。けれど、本書の終わりのも書かれている通り、米国流の金融資本主義は瓦解し、繰り返す歴史と新しい歴史が混沌としている時代に来ている。まさに多く歴史を学ばなければいけない時代であり、全てにおいて自分の目で先を見通し生きていかなければならない。この本に教えられるところは多い。

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2009/02/11

『環境ビジネス』2009年2月1日

B001NPJJG2 環境ビジネス 2009年 02月号 [雑誌]
日本ビジネス出版  2008-12-26

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p.43 CO2排出量: 電力1kWhにつき0.555kg-CO2
p.43 シンクライアントシステムの効果を検証する

p.35 スクリーンセーバー起動5分設定・・・89W
p.35 モニタ電源切る10分設定・・・56W
p.35 システムスタンバイ20分設定・・・37W

p.33 2006年 総発電量9400億kWh / IT 470億kWh (5%)
p33 2025年 総発電量1兆2000億kWh / IT 2400億kWh (20%)

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2009/01/03

『日経ビジネス徹底予測2009』

B001LMYYQ2 徹底予測 2009 2008年 12/22号 [雑誌]
日経BP出版センター  2008-12-08

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p11 公聴会での「恥を知りなさい」が印象的。
p17 2009スケジュール&キーワード → Googleカレンダーにinputして活用 

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2008/12/21

『論理学』/野矢茂樹

4130120530 論理学
野矢 茂樹
東京大学出版会  1994-02

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p13「「命題論理」とは、<否定詞と接続詞の論理学>なのである」
p16「否定詞も接続詞も含まない命題を 原子命題 と呼び、原子命題をもとにして否定詞や接続詞を用いて構成された命題を 分子命題 と呼ぶ」
P17「原子命題の真偽x1,x2,…,xnから分子命題の真偽yへの関数を 真理関数 (truth function) と呼ぶ。」
p49「構文論的方法」
1 以下に規定するような仕方で構成される論理式を「定理」と呼ぶ。
2 出発点として無前提に定理として承認される論理式をいくつか定める。ここで承認された論理式は「公理」と呼ばれる。
3 ある定理ないし諸定理からさらにどのような定理を導いてよいかを規定した規則を定める。この規則は「導出規則」、あるいは「推論規則」と呼ばれる。
4 公理と導出規則を用いて、次々に論理式を構成していく。こうして構成された論理式は「定理」と呼ばれる。
このような構造をもった体系を「公理系」と呼ぶ。
p53「ヒルベルトというドイツの数学者」
p54「ユークリッドが図形表現に引きずられてしまったからだ」
p56「心理学者ピアジェの「発生的認識論」」
p56「記号の意味を考慮せず、記号相互の導出関係、記号変形の規則のみを考察する仕方、このようなアプローチの仕方が「構文論」(syntax)である。それに対して、前節で見たような、意味および真偽という観点から為されるアプローチが、「意味論」(semantics)にほかならない。」

述語論理
p75「ドイツの数学者・論理学者・哲学者であるフレーゲ」
p84「オルガノン」
p85「古代ギリシャ哲学にストア学派およびメガラ学派という学派があったんですが、」
p86「「4の倍数は偶数である」と「4の倍数ならば偶数である」」
p87「特定の個人ないし個物を表わす名前を「固有名」と言い、固有名によって表わされる特定の個人ないし個物を「個体」と言う」
p90「真理性は、明らかに、語のレベルで問われるのではなく、文のレベルで問われる」
p91「空欄の部分は 変項 と呼ばれ、…命題関数を構成する変項以外の要素「…は犬である」の部分は 述語 と呼ばれる」
p95
1 命題 審議を問題にできる文
2 命題関数 命題から個体を表わす表現を空欄にし、x,y,z,…で置き換えたもの
3 (個体)変項
4 述語
5 (個体)定項
6 量化
7 全称量化子と存在量化子
8 量化の範囲
9 自由変項と束縛変項
p100「述語論理において論理的心理とみなされる論理式を「妥当式」と呼ぶ。」
述語論理の意味論
p102「「トートロジー」という言葉は、そのもともとの意味合いである「同語反復」を漠然と意味する場合から、明確に「恒真関数」のみを意味する場合まで、多少の語法の揺らぎがある」
p104「妥当式」 「論理式Aが妥当である=Aはいかなる解釈のもとでも真」
p126「フレーゲの論理主義」
p126「フレーゲへの手紙 ラッセル、1902」
p127「命題関数と集合の同等性」

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2008/12/05

『システム提案で勝つための19のポイント』/野間彰

システム提案で勝つための19のポイント
システム提案で勝つための19のポイント 野間 彰

翔泳社  2006-04-11
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p14 顧客からの反論をこわがる必要はありません。
p17 テーマ候補ごとに構築する仮設
 1. いつ、どのようなシステム投資案件が顧客で発生するか
 2. 顧客はその案件を、どのように検討するか。そこでどのような検討課題にぶつかるか
 3. あなたは、いつ、どのような情報提供や支援を行ない、どのような優位性を確立するか
 4. そのために、提案活動にどれだけのリソース(工数や経費)が必要か
 5. 最終的に、いつ、いくらで、顧客の誰から、どのような案件を受注するか
 6. 受注・遂行のために、どのような課題を、どのように解決するか
p25
 1. 常に顧客に喜ばれる情報を持っていく
 2. 売り込みではなく、価値を提供するスタンスを維持する
 3. 顧客からの質問や反論に対して、的確な回答や切り返しができる
p38 検証すべき課題
 1. これから関係構築を進める顧客とは、本当に「いつでも会える」関係が作れるか
 2. 「いつでも会える」関係になった顧客に、その顧客が将来投資する魅力的なテーマ(重点テーマ)が存在しているか
 3. 重点テーマは、今後顧客名社内で順調に承認されていくか
  …小規模企業では簡単に承認が停滞・覆される。その場合の考え方は、
    ①ある一定の率で、順調に進まないことを踏まえて活動する
    ②転覆の多いセグメントに対しては、異なった予想方法が必要

 4. 重点テーマ推進を支援し、必要な情報獲得や人脈構築、妥当な提案タイミングの把握ができるか
 5. 競争相手よりも先に提案し、勝つことができるか
 6. 受注できた場合、どれだけの収益を得られるか
 7. 提案、受注、開発にどれだけのリソース(時間、経費)が必要か
p52 「システムベンチマーク」…競争相手・先進異業種と比較し、遅れているシステム化領域を気付かせる
p60 徹底的に考える
p67 経営者や上司がそれぞれの提案領域の最大ポテンシャルや妥当な受注目標、リソース調達計画を、正確に設定することができるでしょうか
p75 経営課題さえわかれば、システム化の提案は考えられると思うかも知れません。しかし、革新策の知識がなければ、腕を組んで考えても、現状を革新するアイディアは出てこないのです
p79 現場の合意形成ができていない
p107 アイディアを評価し、絞ることよりも、可能性のあるアイディアを出しつくす
p113 事実を鋭く意味解釈し、インパクトのあるメッセージに仕立てることが必要です
p148  プロジェクトの変更管理
p148 変更管理を厳格に守るには、顧客プロジェクト責任者の上司に訴求すること重要
p159 自主研究への顧客巻き込み
p170 勝ちパターン
p178 ロジックとファクト
p184 徹底的に詰め切る

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2008/11/09

『IT投資で伸びる会社、沈む会社』/平野雅幸

4532313287 IT投資で伸びる会社、沈む会社
平野 雅章
日本経済新聞出版社  2007-08

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  • ITで業績を伸ばすためには、組織の能力が一定以上に高まっている必要がある

p9「工場設計の支配的思想(ドミナントモデル)」
p52 アラル・ワイル

  • 戦略的(ビジネスパートナーとのサプライチェーン改善投資)
  • 情報的(企業内部のサプライチェーン改善投資)
  • 取引的(業務効率化投資)
  • インフラストラクチャー的(ITインフラストラクチャーの維持改善投資)

p79「組織と組織成員とを区別しないことに起因」
p85「組織IQ」

  • 外部情報感度
  • 内部知識流通
  • 効果的な意思決定機構
  • 組織フォーカス
  • 情報時代のビジネスネットワーク→継続的革新

p120「トラブルや事故は確率的に必ず起きるもの」
p136「e-Japanプロジェクトでは、行政の組織プロセスや手続きの大宗を変えることなく、単にITに置き換えるデジタル化だけを図るためにIT投資が行われたきらいがあります。」
p155「英国ではオフィスにたくさんパソコンがあるものの、その大半は特定の仕事のみを行うようにシステム部門によってあらかじめセットアップされて専用機となっていたのです」
p205「日本版SOX法・COSO・COBIT」
p209「内部統制に関わる経常的なIT費用は、大体売上高の0.07-0.35%」

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2008/10/05

『戦略の本質』/野中郁次郎

4532194628 戦略の本質 (日経ビジネス人文庫) (日経ビジネス人文庫 (の1-2))
野中 郁次郎
日本経済新聞出版社  2008-07-29

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 毛沢東の反「包囲討伐」戦、バトル・オブ・ブリテン、スターリングラードの戦い、朝鮮戦争、第四次中東戦争、ベトナム

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2008/05/06

『週刊ダイヤモンド2007/6/23』

天下り全データ

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『週刊ダイヤモンド2005/1/8』

丸ごと一冊「お金」入門

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2008/05/04

『COBIT入門 ITガバナンス・マネジメントガイド』/ハリー・ブーネン+コーエン・ブランド

4820118781 COBIT入門−ITガバナンス・マネジメントガイド
コーエン・ブランド ハリー・ブーネン 峯本 展夫
社会経済生産性本部  2007-12

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itSMF刊行。COBIT4.0反映。
COBITはISACFとISACAが開発。現在はITGI(ITガバナンス協会)に移管。

  • エンタープライズ・ガバナンス=適合性評価(conformance)+業績目標(performance)
  • コーポレートガバナンス・ビジネスガバナンス・ITガバナンス
  • ISO/IEC17799 → ISO/IEC27002に統合
  • COBITクイック・スタート を参照する
  • ISASA(www.isaca.org) ITガバナンス協会(www.itgi.org)
  • ezCOBIT (www.ezCOBIT.com)

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2008/02/11

『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』/竹中平蔵

4532352487 構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌
竹中 平蔵
日本経済新聞社  2006-12-21

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p13「大局判断を間違えないために細部を捨てる勇気は、まさにトップ・リーダーに求められる資質だ。真に腑に落ちたことだけを持ち帰る。」
p20「おそらく国民は、このような姿勢を直感的に感じ取り、小泉総理に対する大きな期待を形成していったのであろう。」
p60「「志を共有する専門家のネットワーク」(エピステミック・コミュニティ)」
p62「ここは、レトリックを巧みに駆使するしかない。私は「当面、不良債権処理に集中しなければならない。だからこの間、完全を期すためにペイオフ解禁を延期する」」
p64「権限の行使には厳格な規定があること、したがって、そのプロセス一つひとつを丁寧にクリアしていくことの必要性」
p68「大臣というのは病気になることが許されない。」
p75不良債権処理のポイント

①資産査定の厳格化のため、市場価格による算定を徹底させる
②大口債務者の債務者区分を統一させる(横串)
③銀行による自己査定と検査による査定の差を公表し、自己査定をより健全なものにする
④必要があれば公的資金を活用する用意があることを明確にし、さらに新たな公的資金についても検討する
⑤繰り延べ税金資産の計上を適正にする
⑥経営健全化計画が未達成な銀行に対しては業務改善命令を出す

p82「参院幹事長(当時)の青木幹雄氏がきっぱりと言った。「これでは選挙は戦えない。選挙の前に株を下げないでもらいたい」」
p91「私は、事務方に協力を求めながら、しかし自分自身が積極的に細部の議論に関与するよう努めた。多くの政治家や評論家は、こうしたレベルの議論になると、ほとんど無関心・無理解になる。」
p101「株式会社日本総合研究所の資産である。それによれば、金融再生プログラムによって発生する離職者数は、78万人から165万人に達するというものだった。・・・「試算には大きなバイアスがかかっており、信頼できません。不良債権処理をいやがる銀行の子会社の試算ですから、やむをえないんじゃないでしょうか」」
p129「栃木県選出の森山真弓前法務大臣から、「いま、栃木選出の国会議員が集まっている。ここに来て、状況を説明してもらいたい」」
p137「ダイエー問題で前向きな議論を進める産業再生機構に対し、経済産業省から露骨な圧力がかかり、これに講義して再生機構の幹部が辞表を提出する騒ぎになっている」
p139金融改革の教訓

①「戦略は細部に宿る」
②無謬性にこだわる官僚マインドが、いかに改革を阻む岩盤になっているか
  民間のプロフェッショナルにも、無謬性の問題が存在していた
③日本ではいまだに過去の政策と行政の総括が十分に行われていない

p156「郵政のそれぞれの事業(郵便、銀行、保険など)が自立すること、そのために分社化が必要だという点だった」
p187「法文にどのような書き方をするか、まさに戦略は細部に宿るのである。これまでは官僚がまんまと政治家の目をごまかしてきた手法を、我々は逆手に取って、抵抗勢力の反対をかわしていった。」
p192「大臣、気合いの勝負です。こういうときは怖い顔をして、徹底的に正論で戦って下さい」
p222「各方面から様々な要望が寄せられる中で、その中身は法案の内容に一切影響を与えないものにしなければならなかった。」
p228「要するに、対案なく批判するのはかくも簡単なことだった。」→永遠の真理・レッテル
p250「「政府部門の民間への委譲」「頑張りがいのある税制」「年金の抜本改革」「画期的な人材再教育」「地方財政の見直し」「特定財源の見直し」」
p254「第一は、「この国を変えるのは並大抵のことではない。世界的に見て普通のことが本当にこの国では容易に通用しない」」
p276「私は政界のドンと言われる人の志の大きさと人間の奥深さを、様々な形で学ばせてもらった。(山中貞則元通産大臣)」
p284「塩川財務大臣は、「諮問会議は具体的なことではなく方向について議論すべきだ」
p288「歳出削減は主計局の問題、減税は主税局の問題」
p304「与謝野大臣は、こうした様子を一切伝えていないことがわかった。」
p310「与謝野大臣も、谷垣大臣もこうした「堅実な前提」という言葉を多用した。しかし、これはおかしなレトリックだった。堅実の反対は放漫である。」
p315「しかし議論の取りまとめ段階で、進行役の与謝野大臣はなおも次のように主張したのである。「成長率と金利の組み合わせをどう見るかで、必要とな る収支改善努力が変わってくる。財政健全化を確実なものにするためには、ほぼプライマリーバランス2%以上の黒字を目標にすることが必要だということは、 概ね共通の認識ではなかったかと思う。」
p320地方財政政策パッケージ

①国と地方の役割分担を明確にするための「分権一括法」を制定すること
②交付税の配分を、面積や人口などわかりやすい客観基準に基づいて行うこと(新型交付税)
③地方行革の新指針を作ること
④不交付団体を画期的に(例えば人口一定規模以上の都市の半分に)増やすこと。またそのための税源委譲を行うこと
⑤自治体の責任を明確化するために再生型の破綻法制を制定すること
⑥地方債の自由化を進めること

p322「とりわけ、NTTの影響力は聞きしに勝るものがあった。まさに、与党と野党双方にである。」
p339「難しい問題を難しい問題として、まず社会全体で認識し直すことの必要性を感じているのである。」
p342「しかし、10キロ先ではなく「1メートル前進しなさい」「次は10メートル前進しなさい」と言われたら、抵抗するのは容易でなくなる。

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2008/01/26

『プロジェクトは、なぜ円滑に進まないのか』/メアリー・グレース・ダフィー

490324167X プロジェクトは、なぜ円滑に進まないのか (ハーバード・ポケットブック・シリーズ 1) (ハーバード・ポケットブック・シリーズ 1) (ハーバード・ポケットブック・シリーズ 1) (ハーバード・ポケットブック・シリーズ 1)
メアリー・グレース・ダフィー 大上 二三雄 松村 哲哉
ファーストプレス  2007-12-06

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  ツールが充実しているので早速活用できる点がこの「ハーバード・ポケットブック・シリーズ」のよいところ。

  • プロジェクト定義シート
  • WBS
  • プロジェクト進捗レポート
  • スケジュールソフト評価表
  • プロジェクト終了段階の分析と教訓

 主に学んだ点は3つ。1つは、プロジェクト管理者は細部まで把握する必要があるということ。1つは、問題に対してフォーカスすること。非難するのではなく解決法を考えること。反復して発生するなら反復を解決するよう考えること。1つは、リソース全般への意識。今の自分の業務では、プロジェクト管理で意識するのは進捗つまり期日だけだが、本来は人・金・時間、そしてクオリティすべてに意識を向けなければならない。

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2008/01/02

『箱』ジ・アービンガー・インスティチュート

4890361383 箱―Getting Out Of The Box
ジ・アービンガー・インスティチュート The Arbinger Institute 冨永 星
文春ネスコ  2001-10

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 『”やぎっちょ”のベストブックde幸せ読書!!』さんで知った本です。「自己欺瞞」との向き合い方がテーマの本で、人にオススメできる良書だと思います。

 唯一心配な点をあげるとすれば、どちらかというと善良な人で行き詰っている人がこれを読むと、更に追い込まれるのではないかという点。そういう意味ではこれは「基本的に人はみんな悪いもんだ」という西欧的な人間観がベースにあってそれがほぼ通用するような社会で有効なのかも知れません。
 なので逆に言うと、日本的と言われる「思いやり」も、実は日本にしかないものではなく、世界中どこにでも存在できる可能性があると言えるし、日本では教育の一環として(これまでは)身につけられていたものが、アメリカではこんなふうに「自己欺瞞」を用いて解明し納得させてていかないと身につかないということもできる。いずれにしても「これは日本独自」「これはアメリカ独自」と決め付けず、良い点をどのように取り込んでいくかという視点が大切。

  • 騙す相手にはどう対処するか?→社内にも騙そうとしてくる相手はいる
  • ファンドと経営者の違い(もしくは同一性)
  • ”リソース”という考え方→自分が何が出来るか?
  • ”正しくない”相手に対する対処法

p30「ゼンメルヴァイス」
p31「我々が『人間関係の問題と呼んでいる、・・・これらを引き起こしているのは、たった一つの原因なんだ。」
p55「一番目の場合には、人は自分を他の人々に囲まれた一個人だと感じているのに対し、二番目の場合には、物に囲まれた一個人だと感じている。」
p58「トム、君と会ったときの相手の気持ちを想像してみてくれないか。」
p63「少なくともわたしの場合、相手の名前に関心がないということは、一人の人間として相手に関心がないということだ。」
p82「ローラ、どうしてそうなんでもかんでも、ややこしくしてしまうんだ。ただ、どうしてるかなと思って電話しただけなのに」
p100「これらはすべて自分への裏切りなの。人のために何かをすべきだと思いながら、それをしない」
p111「妻にはそういう欠点があったにも関わらず、わたしは起きて妻に力を貸してあげなくてはと感じていた。自分の感情に背くまで、妻の欠点はわたしが手を貸さない理由にはなっていなかったんだ。」
p134「自分が自己正当化イメージを持ち歩いているんじゃないかと疑ってみるのも無駄ではないと思う」
p137「そうなんだよ。自分は何でも知っているという自己正当化イメージを持っている場合、その人は、ほんとうにいろいろなことを知りたいと思っているんだろうか」
p151「その通り。こういったのよ。『あら、ぎりぎりだったわね』わかる?息子が責任ある行動をとっても、そのことを認めてあげられなかったっていうわけ」
p152「息子さんを責めている自分を正当化するには、相手が責めるに足る人間でなくてはなりません」
p164「箱の中に入っていると、どうしても自分に気持ちが向いてしまって、結果に集中しきれなくなるんです」
p191「この会社の社員は無能だという確信をいっそう深め、さらに細かく支持を与え、たくさんの方針や手順を作り上げていった。」
p206「だからなんだよ、技術分野以外で技能研修をやってもちっとも効果があがらないのは。さまざまなテクニックがいくら有益なものでも、箱の中で使っている限り、役には立たない。それどころか、相手を責めるさらに巧妙な手口になってしまうんだ。」
p220「箱の外に出た形での人間関係が一つでもあれば、いろいろなことができる」
p237「相手を責めることで、相手はよくなったかな?」

知っておくべきこと
・自分への裏切りは、自己欺瞞へ、さらには箱へとつながっていく。
・箱の中にいると、業績に気持ちを集中することができなくなる。
・自分が人にどのような影響を及ぼすか、成功できるかどうかは、すべて箱の外に出ているか否かにかかっている。
・他の人々に抵抗するのをやめたとき、箱の外に出ることができる。

知ったことに即して生きること
・完璧であろうと思うな。よりよりなろうと思え。
・すでにそのことを知っている人以外には、箱などの言葉を使うな。自分自身の生活にこの原則を活かせ。
・他の人々の箱を見つけようとするのではなく、自分の箱を探せ。
・箱の中に入っているといって他人を責めるな。自分自身が箱の外に留まるようにしろ。
・自分が箱の中にいることがわかっても、あきらめるな。努力を続けろ。
・自分が箱の中にいた場合、箱の中にいたということを否定するな。謝ったうえでで、さらに前に進め。これから先、もっと他の人の役に立つよう努力しろ。
・他の人が間違ったことをしているという点に注目するのではなく、どのような正しいことをすればその人に手を貸せるかを考えろ。
・他の人々が手を貸してくれるかどうか気に病むのはやめろ。自分が他の人に力を貸せているかどうかに気を配れ。

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2007/07/23

『SEのためのシステムコンサルティング入門』/黒岩暎一

4822215725 SEのためのシステムコンサルティング入門―システムコンサルタントになるための実践ガイド
黒岩 暎一
日経BP社  2006-10

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  • これは「大企業向けのコンサルティングビジネス」の指南書であることを踏まえて理解する。
  • 「礼状を書く」というビジネスマナーを再認識。
  • こういう仕事をしたい、という気持ちがあるが、現実の自分のロールと照らし合わせ、求められる結果との折り合いを考える必要がある。
  • ヒアリングと即答性によるビジネスの創出は、現実のロールでも有用。

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2007/07/22

『「コンサルティング・ファーム」の仕事』

4478311579 「コンサルティング・ファーム」の仕事
週刊ダイヤモンド編集部 ダイヤモンドハーバードビジネス編集部
ダイヤモンド社  1998-02

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 1998年の出版だが、現在のコンサルティングビジネスを理解する上でも歴史を知る上でも非常に有益だった。

p26「日本人はまず失敗を考える傾向を持つ」
p123「いまだに社内をインタビューして回って、それをまとめてトップにプレゼンするなんてことが起こる。そうするとどうなるか。トップに「なんだこれは。こんなことならわかっているよ」って言われてしまう。」
p126「最初からコンサルタントに憧れるということは、何か泥臭いことをやりたくないといった感情的な背景があるんじゃないですかね。」
p134「もちろん売り文句は「完全テーラーメイド」でした。」

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2007/07/16

日経ビジネス 1397号 2007年06月25日号

崖っぷち親子家計
ボーナス増でも喜べぬワケ

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2007/07/04

『外資系トップの仕事力』/ISSコンサルティング

4478733341 外資系トップの仕事力―経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか
ISSコンサルティング
ダイヤモンド社  2006-09-08

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 やはり同業界の新宅正明・日本オラクル代表取締役社長と、元同業界(SAP)の藤井清孝・LVグループ代表取締役社長の章がとりわけ面白かった。IT業界の歴史の中で、同じような経験をしているし、立ち上がりの会社がその成長の過程過程でどういったことが起きるか、というのも経験があって読んでいて実感を伴った。
 ほとんどの人の言葉の中に、「仕事を選ぶな」というメッセージがあって興味深かったし、勇気付けられた。もちろん、自分の目標を持って仕事をするというベクトルは必要だろうけど、楽な道など何一つないというメッセージが心強い。最終的に何を成果として得るのか?
 それから、やはりスピード重視の世の中になっているということも改めて感じられた。熟考よりもまず実践。丁寧に確実に沢山の仕事をこなしていくことが自分の力になる。

p19”今も気をつけているのは、「これはこう決まっているから」という発想に陥らないこと。”
p40”手間隙のかかるものについては「ROIが低い仕事はやりたくない」なんて言葉がでてくる。”
p48”上場していると何がいいのかというと、透明なんです。日本の社会にどれだけ貢献しているかも透明です。たとえば、税金。”
p56”どの企業でもそうだと思うけど、人を評価するとき、数字だけではないんです。では、何で評価するのかといえば、人間としてのポテンシャル。”
p85”SPIを簡単に言えば、まずお客様となる先生方の正しいターゲッティングをすること。製品ごとに、ポテンシャルの高い先生に営業をフォーカスすることです。”
p103”マッキンゼーは本当にノンヒエラルキーを徹底しています。よく言われるのは、「課題の前にヒエラルキーなし」。”
p136”よく言う人は全部事実のコメントだった。自分がよく知らないことには、人は批判的になりやすい。”
p147”私が入るまでは、その裾野を考えずに、SAPだけが儲かる仕組みをつくろうとしていた。”
p197”彼は、周囲から見られる評価やプライドみたいなものに束縛されていないんです。”
p217”70点でいいんです。ある程度勝てると思ったら、結論を出して一歩踏み出す。”

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2007/06/23

『SEのための法律入門』/北岡弘章

482222127X SEのための法律入門―事件とQ&Aに学ぶ基本知識と対策
北岡 弘章
日経BP社  2005-07

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p129 仕様確定の仕方
・仕様書=契約で履行すべき内容そのもの
・仕様確定は受託者だけの責任ではない
・当初仕様は何か、仕様変更の合意はあったのか

p155 システム障害時の損害賠償
・免責の有効性は、契約金額の大小にも依存する
・約款の免責条項は、精査される可能性があるが、契約書は相対であるため守る必要がある

JISAモデル契約
http://www.jisa.or.jp/legal/contract_model2002.html

p123 バグ(瑕疵)に関する条項について
瑕疵担保責任(検収前)
・6ヶ月~1年
・保守契約

p153 検収後のバグ(隠れたる瑕疵)
・必ずしも損害賠償(契約解除)できない

瑕疵あり
・システムの機能に軽微とはいえない支障を生じさせる
・遅滞なく補修できないもの
・バグの数が著しく多いもの
・通常予定された使用をする際に合意された機能に支障を生じさせる

瑕疵なし
・バグ発見時に速やかにベンダーが補修を終えた
・補修できないバグについては、ユーザと協議の上相当と認められる代替措置をとっている

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2007/06/21

『巨象も踊る』/ルイス・V・ガースナー

4532310237 巨象も踊る
ルイス・V・ガースナー 山岡 洋一 高遠 裕子
日本経済新聞社  2002-12-02

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p300 「大企業にとって、四半期ごとの業績にほとんど影響しないが長期的な成功に不可欠な点に十分な資源と関心を向けていくのがいかにむずかしいかを、あらためて痛感することになった。」(IBMの顧客満足度の問題に関して)

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2007/06/20

『静かなリーダーシップ』/ジョセフ・L.バラダッコ

479810261X 静かなリーダーシップ
ジョセフ・L. バダラッコ Joseph L.,Jr. Badaracco 夏里 尚子
翔泳社  2002-09

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p96まで。

・現実的になること/自分の理解を過大評価しないこと(p30)
・会社が法律違反の営業キャンペーンを実施した際の対処(p51)

・行動の方向性/自分が不適格だと考えない/自分自身と自分の動機を信じる/自分にとってその問題が本当に重要であるか

・時間稼ぎ(その場/戦略的)

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2007/06/02

『プレジデント2007 6.18号』 「板ばさみ」の心理学

B000QGDJEW PRESIDENT (プレジデント) 2007年 6/18号 [雑誌]
プレジデント社  2007-05-28

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p56 潜在的な不安
①時期 ②金額 ③効果 ④優位性 ⑤継続性
これらのどれかを先に顕在化させ、打ち消す

p62 原則立脚型交渉
四つの事前準備
①ヴィジョンの設定 ②目標の設定 ③BATNAの用意 ④複数の選択肢
・②←ZOPA(Zone Of Possible Agreement)
・Best Alternative To a Negotiated Agreement - 常に代替案を持つ

p64 バルコニーの視点
①人と問題の分離 ②立場ではなく利害に着目する ③双方の利害を調整しうる選択肢 ④客観的基準を示す
・③では話の横展開を心がける

p66 マネジメント
①バルコニーからの視点を持つ ②アジェンダを共有する
・②アジェンダの共有とは、協議事項の順序を操作すること

p78 部門間会議
・無理な目標・責任・約束→即座に条件提示
・「食わせてやっている」→引き分けに持ち込む

p80 値引き交渉
・非常識レベルの値引き
・本音を引き出す…正攻法
  - 単刀直入 と 交渉を価格と別次元に移す
    - 相手の目的 と 自社商品の強みを知る
・難条件の大手
  - 交渉のスケールを広げる
    → リカバリの有無 予測できているか否か
    → パイプの量で勝負が決まる(リカバリを捏造するのではなく、パイプで勝負する)
・即断即決の相手
  - 土俵際を知る
結局、事前準備(「土俵際」、パイプ、リカバリ、自社製品の強み)が大切

p88 売り込み
・品位、熱意、信頼感
・無名零細企業が一流企業にイエスと言わせる
  - 一線を明確に伝える
・飛び込みを次のアポにつなげる
  - 営業の分母を広げる
・ライバル社顧客
  - 今はライバル社だがこれからは自社
     「どこでも同じ」はやはり禁句
・断られた顧客に再挑戦する
  - ①対立点②相手の要望

p100 孫子、マキャベリ
・五事(道、天、地、将、法)

p106 ハーバード流交渉術
七要素①関心利益②オプション③代替案④正当性⑤コミュニケーション⑥関係⑦遂行義務
②オプション=合意のために提示する選択肢
③代替案=合意以外で考えられる方策
「立場」と「利害」は別である

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2007/03/11

『プロジェクトはなぜ失敗するのか』/伊藤健太郎

4822281779 プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵
伊藤 健太郎
日経BP社  2003-10

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 プロジェクト・マネジメントの必要性を認識させてくれる一冊。プロジェクト・マネジメントの入門書。PMの考え方の骨格の部分を理解できます。特に、プロジェクトでは共通した知識と継続的な改善が必須であることを十分に理解できます。
 入門書であり教科書的なので、実践的に踏み込んではいません。なので、「企業にはPMOを設置するべきである」と言った、一般のプロマネやプロジェクトメンバーではどうしようもないような方策が前提になったり、現場では「前向きな意思を持って課題にあたることが大切」といった多少精神論的な面もあったりしますが、この一冊でまずプロジェクトマネジメントの「あるべき姿」を理解することができます。

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2007/01/28

『「IT失敗学」の研究』/不条理なコンピュータ研究会

4822207994 IT失敗学の研究―30のプロジェクト破綻例に学ぶ
不条理なコンピュータ研究会 日経コンピュータ
日経BP社  2006-02

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 ITプロジェクトの失敗ケーススタディ。ITプロジェクトが失敗する原因をほぼすべて網羅できているといっていいと思う。ITプロジェクトの成功には、経営者・情報システム部・ベンダー3者それぞれの適切な理解と活動が不可欠。言い換えると、3者のいずれかに問題があるとプロジェクトは失敗する。本書では、原因別に3者に分けて章立てされていて読みやすい。

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2006/02/15

『告白』(町田康/中央公論新社)

4120036219 告白
町田 康
中央公論新社  2005-03-25

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 「人はなぜ人を殺すのか」ってそんなことはどうでもよくって、「思ってることを表現する言葉を持たない人間はどうなってしまうのか」というテーマに強く惹かれた。まして舞台が河内で使ってる言葉が河内弁。最近、常々「腹の中ではそんなこと言いたいとは思ってないのに、関西弁という言葉のせいでノリで調子いい方向に話が流れていってしまう」という軽い悩みがあったりして、正直に言って読むのが怖かった。
 思っていることを直接・・・

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2005/05/04

『チェンジ・ザ・ルール!』(Eliyahu M. Goldratt/ダイヤモンド社)

チェンジ・ザ・ルール!
エリヤフ・ゴールドラット 三本木 亮

ダイヤモンド社  2002-10-11
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『老いてこそ ゆるやかな坂道の途上で』(Maurice Maschino/原書房)

老いてこそ―ゆるやかな坂道の途上で
モーリス マスキノ Maurice Maschino 高野 優

原書房 2002-04
売り上げランキング : 1,467,932

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『不可能な交換』(Jean Baudrillard/紀伊国屋書店)

不可能な交換
ジャン ボードリヤール Jean Baudrillard 塚原 史

紀伊国屋書店 2002-01
売り上げランキング : 87,799

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 思想書を読むのは2,3年ぶりで、読み始めてから読み終えるまでに1ヶ月かかってしまった。もちろん、本書で使用される語彙をすべて理解できていないし、それどころかまず言葉そのものを覚えてさえいない。そんな中途半端な状態で思想書の読後感なんて書いてはいけないのだけど、サラリーマンで門外漢の僕に思想書を100%理解するだけの時間を割くことはできないので、一頻り思ったことを書いてみる。
 思想のおもしろさは、「正当化のプロセス」にあると僕は思っている。世界の構造や価値観の行く末について、先人が使用してきた語彙の重なりを踏まえながら、それを揺らしたり強めたりして、自分の解釈を「正当化」していくのだ。突飛で跳躍し過ぎているようでも、そのプロセスによっては納得せざるを得ない(というよりは反論できないということか)ことがあったりして、そこがおもしろい。
 『不可能な交換』は、一読した限りでは人の「ないものねだり性」の行く末を、思想的に予言している論考に思えた。貨幣の登場以来、経済原則は主義の如何を問わず「等価交換の実現可能性」を第一義としてきた。あらゆるものは、その等価物と交換可能であるという原則だ。等価交換が可能であるがゆえに貨幣が成り立ち、ありとあらゆるものに意味と目的を与えることができると思い込んでいる。
 その結果、あらゆるものごとは予測可能であり安定的であり、その安定性を揺るがす部分=「生」に対する「病」や「死」、「現実」に対する「神話」や「幻想」、それらを抽象化した概念としての「否定性」や「悪」を追放して「肯定性」と「善」によるトータルな支配を実現せんと試み続けてきた。
 ところが我々はここへ来て、兼ねて遠くへ押しやってしまいたかったはずの「死、幻想、否定性、悪」等々にノスタルジーを抱いてしまっている。例えばクローン技術はわれわれに幸福な未来を想像させるだろうか?
  しかし単純に一度追いやった「死、幻想、否定性、悪」が簡単に再生される訳ではなく、その対立性そのものが無効となり、等価の概念が無効となるがゆえに等価物も失い、安定性の基盤が無効となって、不確実性に支配されるというのがボードリヤールの論考の概要だと(今のところ)思っている。
 この論考は力強い説得力がある。実際、「等価交換の実現可能性」を最も直接的に信奉すべき立場にある経済の場面では、未だに予測可能性も安定性も確立することができないでいる。かと思えば、イメージによる予測不可能な大ヒットとその現象の記号化さえ起きているし、さまざまな差別化を施した性と貨幣との等価交換は、その債権者側=売春側の幻想を打ち砕く方向に推移している。
 こんなふうに平たい言葉で言ってしまうのは、思想の土俵ではルール違反だけど、そもそも「等価交換」とは「なんでも金で解決できる」という思い込みであって、至って凡人的に考えれば、そんなことありうる訳はないのだ。しょうがないから損害賠償やら罰金やらそういうルールを作ってやってきただけで、そのルールを神格化したところからこの物語は始まっている。「不可能な交換」と言われると体の奥がなんとも言えずざわめくような生理的な不安を覚えるが、これは凡人がまっとうだと極めて凡人的に考える「世界」を取り戻すための思想に流用することさえできると思う。ボードリヤールは、「違う。これは高度情報化社会の先に進展する世界であって、かつてあった世界を取り戻しているのではない」と言うかも知れないが。

 一向構わない。奇しくも「進展するのみで取り戻せはしない」というように、世界は「不可逆的」で「不可避」なのだから。

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